ミステリ
高山 宏 殺す・集める・読む殺す・集める・読む―推理小説特殊講義 (創元ライブラリ) ホームズ、チェスタトン、クリスティらの錚々たる作品に文化史的視点から新たな光をあてるミステリ論。たとえばホームズを世紀末的感性から見つめ直した時、彼らの華麗な冒…
ヘレン・マクロイ 逃げる幻 逃げる幻 (創元推理文庫) 休暇中にハイランド地方を訪れたダンバー大尉は、理由不明の家出を繰り返す少年について相談を受ける。しかもその少年は荒野の真ん中から突如消え失せたという。大尉は偶然家出しようとしている途中の少…
中村 融編 街角の書店 (18の奇妙な物語) 街角の書店 (18の奇妙な物語) (創元推理文庫) ミステリ、SF、怪奇をベースにブラックユーモアを効かせて読後にいわく言いがたい奇妙な味わいを残す「奇妙な味」と呼ばれる類の短篇を集めたアンソロジー。この本は比較…
マーヴィン・ピーク タイタス・グローン―ゴーメンガースト三部作 1 タイタス・グローン―ゴーメンガースト三部作 1 (創元推理文庫 (534‐1)) ゴーメンガースト三部作その1。連綿と続くしきたりと石の重みに閉じ込められた異形の城、ゴーメンガースト。七十七…
トマス・フラナガン アデスタを吹く冷たい風アデスタを吹く冷たい風 (ハヤカワ・ミステリ 646) 名作として名高い(らしい)ミステリ短篇集。らしいというのは私が寡聞にして今まで知らなかったからです。はい。 うち四編はアデスタという独裁が敷かれた小国…
ジョン・ディクスン・カー テニスコートの殺人 テニスコートの殺人【新訳版】 (創元推理文庫) 雨上がりのテニスコートの真ん中に転がっていた若きプレイボーイの絞殺死体。周囲のぬかるんだ土の上には婚約者ブレンダの足跡しかついていなかったが、彼女は絶…
ロバート・ファン・ヒューリック 東方の黄金東方の黄金 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1804) ディー判事もの、時系列でいうと最初の事件。キャラの魅力はいうほど…だけどストーリー展開はこなれてるし、怪奇やら宗教やら陰謀やら盛りだくさんの割にさっくり…
キャサリン・マンスフィールド マンスフィールド短篇集マンスフィールド短編集 (新潮文庫) みずみずしい文章と感性にゆらゆら揺れる。その揺らぎは時に幸せのさなかから死や絶望、容赦の無い現実へとも大きく振れ、ざくりと心をえぐっていく。逆もないわけで…
ジョン・ファウルズ 魔術師 上・下 魔術師〈上〉 (河出文庫) 魔術師〈下〉 (河出文庫) 恋人アリスンから離れるためにギリシャの島で英語教師として就職したイギリス人青年ニコラス。謎の老人コンヒスやまるで過去から抜け出してきたような美女との出会いから…
ピエール・シニアック ウサギ料理は殺しの味ウサギ料理は殺しの味 (創元推理文庫) 車の故障でしばらく田舎町に滞在することになった私立探偵事務所の職員シャンフィエ。そこではレストランのメニューにウサギ料理が載ると若い女が殺される、という奇怪な事件…
スティーヴ・ホッケンスミス 荒野のホームズ荒野のホームズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1814) 観察眼と推理力にすぐれ、ホームズを敬愛している無口な兄(この世界ではホームズは実在の人物になってる)と、しゃべり上手でちょっとお調子者の弟。洪水のた…
アントニイ・バークリー レイトン・コートの謎レイトン・コートの謎 世界探偵小説全集 36 レイトン・コートの主人スタンワース氏が書斎で額を撃ち抜かれて亡くなっているのが発見された。書斎は密室状態であったのと、彼がリボルバーを手にしていたことから…
ヘレン・マクロイ 小鬼の市 小鬼の市 (創元推理文庫) カリブの島国に駐在していたアメリカの新聞記者の死亡後、その業務を引き継いだフィリップ・スターク。前任者の死亡は単なる事故と見なされていたが、そうではなかった。前任者が遺したスクープの手がか…
最近泥棒ものを続けて読んだので。探偵以上にキャラクタの魅力が必要とされるジャンルだろうなぁ。 ローレンス・ブロック 泥棒は選べない 泥棒は選べない 小粋でスマートな泥棒紳士バーニィが依頼を受けて盗みに入った部屋では殺人事件が起こっていた。容疑…
三谷 康之 イギリスの窓文化イギリスの窓文化 イギリスの様々な窓について。その窓の出てくる文学や映画についての言及はあるものの、建築史的なことにはあまり触れず、エッセイ的なところがあってとても読みやすい。古典児童文学を思わせるような、落ち着い…
R.A.ラファティ 昔には帰れない昔には帰れない (ハヤカワ文庫SF) 初ラファティ。作品紹介によると「SF界のホラ吹きおじさんの異名を持つ鬼才ラファティ」だそうですが、この短篇集はそんなにSF分ないような。二部構成で、Ⅰ部とⅡ部では編者が違い、収録作品の…
ウィリアム・アイリッシュ 『幻の女』幻の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 9-1)) 適度な緊迫感とスピードで読ませる、お手本のようなストーリー展開。よく出来たサスペンスミステリです。しかし今この作品が評価され続けているのは、プロットの面だけではな…
もうひとつの街 プラハの古書店で手にとった本には見たこともない文字が書かれていた。その本を購入して以降、主人公はプラハの街の不思議なもう一面を見ることになる。古風なファンタジーを思わせる滑り出しだけど、繰り出されるイメージと文章はかなりシュ…
ドグラ・マグラ ぐっと引きずり込まれる冒頭部から、独特の言葉遣いと擬音語の多さが生むリズム感と、事件の真相がいつ明かされるかへの興味が先へ先へと引っ張っていってくれます。奇書やら読んだら気が狂うやら言われている作品ですが存外リーダビリティい…
アガサ・クリスティ ゼロ時間へゼロ時間へ (クリスティー文庫) 殺人が起こる決定的な「ゼロ時間」。その前には様々な出来事が積み重なった結果、その瞬間へつながっていくはず。その過程を描くミステリが本作、ということになります。クリスティの他の作品で…
ジェラール・ド・ネルヴァル 火の娘たち火の娘たち 各短編の題名が女性名ばかりなのからも分かるように、基本主題は失われた恋で、一見ごく素朴なロマンスで構成されているように見えるけど…。「シルヴィ」や「コレッラ」の印象に引きずられているのかもしれ…
人間和声 (光文社古典新訳文庫) 夢見がちな青年、スピンロビンは“勇気と想像力ある秘書求む。当方は隠退した聖職者。テノールの声とヘブライ語の多少の知識が必須”という謎の求人に応募し、山奥の屋敷に住み込むことになる。雇い主のフィリップ・スケール は…
美濃牛 (講談社文庫) 初殊能将之。美濃の山奥、病を癒やす奇跡の泉があるという鍾乳洞と、その地主一族をめぐる連続殺人事件。タイトルの美濃牛はミノタウロス、事件の起こる暮枝はクレタ、ヒロインの窓音はマドンナ+アリアドネ、と露骨にギリシャ神話モチ…
(講談社文庫)" title="十角館の殺人 (講談社文庫)" width="115" height="160" border="0" />十角館の殺人 (講談社文庫) 館シリーズ、今回初めて読んだ。海外ミステリも知らない作品いっぱいあるのだけど、国内ミステリはそれ以上に読んでない。未知の大陸で…
検死審問ふたたび (創元推理文庫) 傑作ユーモアミステリ『検死審問―インクエスト』の続編。前作は展開の鮮やかさ、語りの上手さ、軽妙なユーモアと魅力たっぷりの小気味いい作品だったけど、続編も期待に違わず素晴らしかった。特にユーモアに関しては前作を…
イギリスだより―カレル・チャペック旅行記コレクション (ちくま文庫) 初チャペックが旅行記というのもどうなんだろうとちょっと思ったけど、おもしろかったので問題なし。ユーモアと愛情(そして皮肉)が詰め込まれた愛すべき作品。ロンドンや都市部について…
ルピナス探偵団の憂愁 (創元推理文庫) ルピナス探偵団二作目。これを読みたいがために当惑(前作)を買ったクチです。ジュブナイルらしい「当惑」にくらべ、「憂愁」は戻らない青春の回想という切なさが全編に満ちていてまた趣が違う。冒頭である登場人物の…
五匹の子豚 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) 才能ある画家だった夫を毒殺し獄中死した妻。誰が見ても有罪間違いなしの事件だったが、16年後、ポアロのもとに彼らの娘が訪れて母の無罪を明らかにしてほしいと依頼する。当時の関係者5人の証言と手記からポア…
アンナ・カヴァン 『アサイラム・ピース』アサイラム・ピース カフカを思わせる不条理と不安、寄る辺のなさ。悲鳴になる一歩手前の、それでも抑えながら語る声を美しいといっていいものかどうか。装丁は文句無しに美しいが。カフカにはユーモアのクッション…
小沼丹 『黒いハンカチ』黒いハンカチ (創元推理文庫) 若い女学校の教師ニシ・アズマがその観察眼と機転で小事件を解決するミステリ短篇集。上品な茶目っ気と静謐さをゆるゆると楽しむ。ミステリというよりも小沼丹の語りの魅力を目当てに買ったのだが、ミス…