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ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

幻想

2016年ベスト10冊(後半)

(6)アンナ・カヴァン 鷲の巣鷲の巣 満たされない日々を過ごし人生への絶望に陥りかけていた語り手のわたしは、過去に世話になっていた人物「管理者」が新聞に求人を出しているのを見かけ、そこに最後の希望をたくします。しかし、鷲の巣と呼ばれる管理者の…

2016年ベスト10冊(前半)

今更感がありますが2016年読んだ本ベスト10冊です。読んだ順。 (1)R・A・ラファティ 第四の館第四の館 (未来の文学) 『地球礁』『宇宙舟歌』に並ぶラファティの初期代表長篇だそうですが、この中だったら個人的にはこれが一番面白いと思います。「とっても…

ミハル・アイヴァス著 阿部 賢一訳 黄金時代

ミハル・アイヴァス著 阿部 賢一訳 黄金時代黄金時代 前半は西洋文明とは全く異なる不思議な文化様式を持つ架空の島についての文化人類学的紀行文、後半はその島の唯一の芸術といえる「本」の一部の内容を記憶をもとに書き記したものという構成。流れ落ちる…

安部 公房  燃えつきた地図

安部 公房 燃えつきた地図燃えつきた地図 (新潮文庫) 失踪した男の調査を依頼された興信所の職員のぼく。男の妻である依頼人の妻からは確たる話を引き出せず、わずかな手がかりを追っていくも、見当違いの方向に引き回されるばかり。いつしかぼくはぼく自身…

稲生 平太郎  アムネジア

稲生 平太郎 アムネジアアムネジア 1つの死亡記事に興味を持ったことから謎の巨大闇金融、永久機関、かみのけ座、いつかのお茶会のチョコレート・ケーキ、殺人諸々が織りなす甘く残酷な非日常に絡め取られていく僕。読み進めるうちに自分の足元もぐらついて…

ロード・ダンセイニ 中野 善夫訳  ウィスキー&ジョーキンズ

ロード・ダンセイニ 中野 善夫訳 ウィスキー&ジョーキンズウィスキー&ジョーキンズ: ダンセイニの幻想法螺話 密林に潜む幻の獣、摩訶不思議な魔術、秘密の宝物、魔性の女性…しがない英国のビリヤード・クラブの名物、ウィスキーがあればいくらでも信じがた…

ポール・オースター 幻影の書

ポール・オースター 幻影の書幻影の書 (新潮文庫) 妻子を飛行機事故で失い、絶望に陥った私を立ち直らせたのはずっと以前に映画界から姿を消した無声映画の監督兼俳優のヘクター・マンだった。彼の映画に取り憑かれ、研究本を出版した私のもとに、死んだと思…

ミヒャエル・エンデ 自由の牢獄 (とマグリット展)

ミヒャエル・エンデ 自由の牢獄自由の牢獄 (岩波現代文庫) この前マグリット展を見に行って、今更ながらマグリットはとてもいいなあと思ったのと同時に、エンデの短編集「自由の牢獄」を連想した。そもそも私がシュルレアリスムを勉強したいと思っている(し…

ジーン・ウルフ ピース

ジーン・ウルフ ピースピース アメリカの寂れた小さな街に住む老人の回想、という体裁で語られる幻想文学。子供の頃の近所の子供の死、美しい叔母とその求婚者たち、叔母の知人が語る石化する薬剤師の話の思い出、そしてその回想の中にいくつも挿まれる童話…

中村 融編  街角の書店 (18の奇妙な物語)

中村 融編 街角の書店 (18の奇妙な物語) 街角の書店 (18の奇妙な物語) (創元推理文庫) ミステリ、SF、怪奇をベースにブラックユーモアを効かせて読後にいわく言いがたい奇妙な味わいを残す「奇妙な味」と呼ばれる類の短篇を集めたアンソロジー。この本は比較…

ジュリアン・グラック アルゴールの城にて / エリック・ファーユ わたしは灯台守

ジュリアン・グラック アルゴールの城にてアルゴールの城にて (岩波文庫) 広大な森と海に囲まれたブルターニュの古城で、三人の男女が展開する無言のオペラ劇。饒舌な文章は比喩を重ね、読者を予感と表象の迷宮に落としこむ。なんとまあ濃密な…くらくらする…

エリザベス・ボウエン ボウエン幻想短篇集

エリザベス・ボウエン ボウエン幻想短篇集ボウエン幻想短篇集 アイルランド出身の作家、ボウエンの短篇のうち幻想味の強いものを集めた短篇集。ゴーストストーリーが多い。それも(雑なくくりで申し訳ないけれど)いわゆる怪奇系ゴーストというより心理系ゴ…

マーヴィン・ピーク タイタス・グローン―ゴーメンガースト三部作 1   アレクサンダー・レルネット=ホレーニア 両シチリア連隊 

マーヴィン・ピーク タイタス・グローン―ゴーメンガースト三部作 1 タイタス・グローン―ゴーメンガースト三部作 1 (創元推理文庫 (534‐1)) ゴーメンガースト三部作その1。連綿と続くしきたりと石の重みに閉じ込められた異形の城、ゴーメンガースト。七十七…

一言感想まとめ

池澤春菜 乙女の読書道乙女の読書道 翻訳SF、ファンタジーに特化したレビュー集。何というかこってりがっつりなセレクトですね。意外にジャンルかぶってるようでかぶってなかったため、未読の作品が多く勉強になった。ダイアナ・ウィン・ジョーンズとウッド…

アストリッド・リンドグレーン わたしたちの島で / ポール・ボウルズ モロッコ幻想物語

アストリッド・リンドグレーン わたしたちの島でわたしたちの島で (岩波少年文庫) 避暑地としてウミガラス島の古びた別荘を借りたメルケルソン一家と島の人々の過ごす日々を描いた児童文学。もともとテレビドラマの脚本として書かれたものだそうで、長編と連…

フラン・オブライエン 第三の警官

フラン・オブライエン 第三の警官 第三の警官 (白水Uブックス/海外小説 永遠の本棚) 出版資金のために使用人と共謀して、とある金持ちの老人を殺した僕。隠した金庫を取りにその老人の家にもう一度忍び込んだところ、老人の亡霊に出くわし、そしていつの間に…

桑原 弘明 Scope / 桑原 弘明,巖谷 國士  スコープ少年の不思議な旅

桑原 弘明 ScopeScope 巖谷 國士 , 桑原 弘明 スコープ少年の不思議な旅スコープ少年の不思議な旅 掌にのる小さな金属製の箱。取り付けられている筒から中を覗くと、そこには小さな部屋が、庭が、世界が広がっている。桑原弘明の手による、このスコープとい…

アントニオ・タブッキ 夢のなかの夢

アントニオ・タブッキ 夢のなかの夢夢のなかの夢 (岩波文庫) 実在した芸術家たちが見たかもしれない夢を描いた短篇集。各話に彼らそれぞれの作品・生涯が織り込まれているものの、その不条理と浮遊感は実際の夢のよう。今はもういない人々が見た夢の世界を覗…

カレル・チャペック 園芸家12ヶ月 / 吉田 篤弘 パロール・ジュレと魔法の冒険

カレル・チャペック 園芸家12ヶ月園芸家12カ月 (中公文庫) なぜか小説には手を付けずエッセイばっかり買ってるチャペック。皮肉なユーモアが読んでいて落ち着くもので…この本も期待に違わず楽しく読んだ。園芸家(というか園芸マニア)とはいかに滑稽なもの…

一言感想まとめ

西崎憲 世界の果ての庭世界の果ての庭 (ショート・ストーリーズ) (創元SF文庫) 幾つかの物語の断片が交互に描かれ、ゆるやかにつながり、しかし収束はしない。幾つものルーム(区画)が連なる庭を逍遥する心地。虚実も時空も宙ぶらりんな中を漂う快楽は何だ…

マルセル・ブリヨン 砂の都

砂の都 ラマ教の壁画を探し求めていた考古学者は、突如激しい砂嵐に襲われ洞窟へ避難する。砂嵐が過ぎ去ったあと、洞窟からはい降りて行くと、そこは活気あふれる中世のオアシス都市だった。 読み終えて少し放心。これは好き。タイトルとは裏腹に、オアシス…

カレル・チャペック 北欧の旅 / ウォルター・デ・ラ・メア 死者の誘い

カレル・チャペック 北欧の旅北欧の旅―カレル・チャペック旅行記コレクション (ちくま文庫) イギリスだよりはエッセイに近いところがあった気がするが、この北欧の旅は船旅であるせいか旅行記らしくてわくわくする。永遠の黄昏の光、黒く古い森と花崗岩、そ…

佐藤 亜紀  バルタザールの遍歴 /  天沢 退二郎  光車よ、まわれ!

佐藤 亜紀 バルタザールの遍歴バルタザールの遍歴 (文春文庫) ひとつの体に双子の精神を持ったウィーン没落貴族、バルタザールとメルヒオールの遍歴の物語。 20代で書かれたとは思えない文章力と知識量。大戦前のヨーロッパが舞台だけど、翻訳小説と言われた…

光嶋 裕介 幻想都市風景 / ジョン・クロウリー エンジン・サマー

光嶋 裕介 幻想都市風景幻想都市風景 珍しく画集など。人の気配があまりしない都市・建築の絵は好き。まわりに生きた他人がたくさんいるのは煩わしいが、全く人の手が入っていない自然の中は不安・寂しい、というダメっぷりを許容してくれますし…。 この『幻…

ミハル・アイヴァス もうひとつの街 / セバスチャン・ジャプリゾ シンデレラの罠

もうひとつの街 プラハの古書店で手にとった本には見たこともない文字が書かれていた。その本を購入して以降、主人公はプラハの街の不思議なもう一面を見ることになる。古風なファンタジーを思わせる滑り出しだけど、繰り出されるイメージと文章はかなりシュ…

夢野久作 ドグラ・マグラ / パーシヴァル・ワイルド 悪党どものお楽しみ

ドグラ・マグラ ぐっと引きずり込まれる冒頭部から、独特の言葉遣いと擬音語の多さが生むリズム感と、事件の真相がいつ明かされるかへの興味が先へ先へと引っ張っていってくれます。奇書やら読んだら気が狂うやら言われている作品ですが存外リーダビリティい…

一言感想まとめ

ジェラール・ド・ネルヴァル 火の娘たち火の娘たち 各短編の題名が女性名ばかりなのからも分かるように、基本主題は失われた恋で、一見ごく素朴なロマンスで構成されているように見えるけど…。「シルヴィ」や「コレッラ」の印象に引きずられているのかもしれ…

南條 竹則   怪奇三昧 英国恐怖小説の世界

怪奇三昧 英国恐怖小説の世界 南條竹則さんによる怪奇・幻想文学のブックガイド。『恐怖の黄金時代』に加筆+新原稿を加えたものだそうな。紹介されている作家はブラックウッド、マッケン、ラヴクラフト(ダンセイニ)、M.R.ジェイムズ、メイ・シンクレア、M…

一言感想まとめ

ジョージ・オーウェル 一九八四年 一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫) いつか読もうと思いつつずるずると先延ばしにしてたのをようやっと読んだ。希望のないストーリーながらシンプルな構成と筆致は思いの外読みやすい。特に第三部~ラストはそれまで淡々…

ケイト・アトキンソン 世界が終わるわけではなく / カルロス・ルイス・サフォン 天使のゲーム 上・下

世界が終わるわけではなく (海外文学セレクション) ギリシャ神話やポップカルチャーを下地に、人生の生々しさや苦さが織り交ざるシュールでふわふわした短編たち。ケリー・リンクやケヴィン・ブロックマイヤーと似た系統の作品ですね。読み終わってみると、…

W.B.イエイツ ケルトの薄明

ケルトの薄明 (ちくま文庫) イエイツが集めたケルトの伝承などを、イエイツ自身が書き記したもの。完全なフィクションではなく、実際に起こったと言われている不思議な話(もしくはそれを語り継いだもの)といったものが多くおさめられている。そのせいか、…

ジュール・シュペルヴィエル 海の上の少女

海の上の少女―シュペルヴィエル短篇選 (大人の本棚) 不思議な光をたたえるシュペルヴィエルの短篇集。強いて言うなら童話に近い雰囲気の作品が多いが、その喪失感とさみしさは透明ではあるものの子どもが読むにはほろ苦い。 シュペルヴィエルは二つの祖国、…

一言感想まとめ

アンナ・カヴァン 『アサイラム・ピース』アサイラム・ピース カフカを思わせる不条理と不安、寄る辺のなさ。悲鳴になる一歩手前の、それでも抑えながら語る声を美しいといっていいものかどうか。装丁は文句無しに美しいが。カフカにはユーモアのクッション…

一言感想まとめ

小沼丹 『黒いハンカチ』黒いハンカチ (創元推理文庫) 若い女学校の教師ニシ・アズマがその観察眼と機転で小事件を解決するミステリ短篇集。上品な茶目っ気と静謐さをゆるゆると楽しむ。ミステリというよりも小沼丹の語りの魅力を目当てに買ったのだが、ミス…

一言感想まとめ

アントニイ・バークリー 『第二の銃声』第二の銃声 (創元推理) (創元推理文庫) 読了日:1/3 これまたおもしろかった。色々とにやにや。郊外の邸宅で招かれていたお客さんたちの余興の最中に事件発生、という古き良き英国ミステリを楽しんでいたと思ったら終…

牧野信一 風媒結婚 (日本幻想文学集成)

本・雑誌牧野信一 風媒結婚 (日本幻想文学集成) 読了日:2/12 センター現文で話題になってたマキノさん。といってもこの本には出題された「地球儀」ははいってませんが…岩波の『ゼーロン・淡雪』だけ以前に読んだことがあって、日本の土俗的な情景の中にふら…

カルロス・フエンテス 誕生日

誕生日 内容(「BOOK」データベースより) 過去でありながら、未来でもある混沌の現在―螺旋状の時間。家であり、町であり、一つの世界である場所―流転する空間。自分自身であり、同時に他の誰もである存在―互換しうる私。目眩めく迷宮の小説。『アウラ』をも…

レオ・ペルッツ 夜毎に石の橋の下で

夜毎に石の橋の下で 内容説明 1589年秋、プラハのユダヤ人街を恐るべき疫病が襲った。 墓場に現れた子供の霊は、この病は姦通の罪への神の怒りだと告げる。 これを聞いた高徳のラビは女たちを集め、罪を犯した者は懺悔せよと迫ったが、 名乗り出る者はなかっ…

コルタサル 遊戯の終わり

遊戯の終わり (岩波文庫)内容(「BOOK」データベースより) 肘掛け椅子に座って小説を読んでいる男が、ナイフを手にした小説中のもう一人の男に背後を襲われる「続いている公園」、意識だけが山椒魚に乗り移ってしまった男の変身譚「山椒魚」など、崩壊する…

グアテマラ伝説集

グアテマラ伝説集 (岩波文庫)内容(「BOOK」データベースより) マヤの神話、インディオ世界への深い共感と愛惜をこめて書きあげられた、グアテマラのノーベル賞作家アストゥリアス(1899‐1974)による“魔術的リアリズム”の傑作。「「大帽子の男」の伝説」「「…