ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

グアテマラ伝説集

内容(「BOOK」データベースより)
マヤの神話、インディオ世界への深い共感と愛惜をこめて書きあげられた、グアテマラノーベル賞作家アストゥリアス(1899‐1974)による“魔術的リアリズム”の傑作。「「大帽子の男」の伝説」「「花咲く地」の財宝の伝説」「春嵐の妖術師たち」など、古代マヤ、植民地時代の信仰と伝説が力強く痙攣する蠱惑的な夢の精髄。


 タイトルは伝説集だけど、実際はグアテマラの伝承をもとにした短篇集。難解という意見をよく見るが、確かに溢れんばかりの独特の比喩、馴染みのない世界観などのためにひとつひとつの文を読み取っていくのに時間がかかる。「春嵐の妖術師たち」では考えるのをやめようかと思った。
 でも、ラテンアメリカ文学の祖と言われるだけあって、むせかえるような生命の息吹と強烈な色彩はとても蠱惑的。フレーズのひとつひとつから樹々が茂り花が咲き獣や蜂鳥や神々がさまよいでてくるような。はじめてラテンアメリカ文学に手を出した時の新鮮さと文章自体に魅了される感覚を思い出した。
 はじめの数篇は比較的読みやすい。長さも短いし。「刺青女」の伝説や「大帽子の男」の伝説にはちょっとコミカルなところもある。半分弱を占めるククルカンの戯曲は長さもあってちょっときつかったけど、その世界観に興味を惹かれる。

フランシス・ド・ミオマンドル宛のポール・ヴァレリーの手紙、グアテマラ、「金の皮膚」の回想、「火山」の伝説、「長角獣」の伝説、「刺青女」の伝説、「大帽子の男」の伝説、「花咲く地」の財宝の伝説、春嵐の妖術師たち、ククルカン―羽毛に覆われた蛇