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ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

コルタサル 遊戯の終わり

感想 海外 幻想 マジックリアリズム

内容(「BOOK」データベースより)
肘掛け椅子に座って小説を読んでいる男が、ナイフを手にした小説中のもう一人の男に背後を襲われる「続いている公園」、意識だけが山椒魚に乗り移ってしまった男の変身譚「山椒魚」など、崩壊する日常世界を、意識下に潜む狂気と正気、夢と覚醒の不気味な緊張のうちに描きだす傑作短篇小説集。短篇の名手コルタサルの、夢と狂気の幻想譚。


読了日:9/20


 岩波のコルタサル短篇集二弾目。一弾目の「悪魔の涎・追い求める男」ほどのインパクトはないものの、日常がいつの間にかねじれて非日常の世界に閉じ込められていく不気味さ、その過程をあくまでもなめらかに描く洗練された技巧はたっぷり堪能できる。この流れが恐ろしく自然で、エレガントさを感じるくらい。「誰も悪くはない」なんてセーター脱ごうとしてるだけの話なのにこんな不穏なラストになってしまうとは…。冷たく得体のしれない悪夢から覚められない恐怖。そして更に怖いのは、この変化、悪夢の世界をつくりだしているのはほかならぬ登場人物の(そして読み手の)意識ではないかということ。正気と狂気の境目が見いだせない。
これら悪夢的な短編の他には、子供の繊細な心情を描いた話やマッチョイズムを感じさせる話も収められている。思春期の微妙な心情を描くのもうまい。しかしマッチョ系の話は苦手というかよく分からないなー。
 未読の話の中で印象的だったのは、山椒魚にのめりこむあまり意識がのりうつる「山椒魚」、コンサートの熱狂のはてに何かが起きる「バッカスの巫女たち」、彫像に取り憑かれて狂気に至る「キクラデス諸島の偶像」などなど。一編一編が短いので結構話数が多い。

Ⅰ…「続いている公園」、「誰も悪くはない」、「河」、「殺虫剤」、「いまいましいドア」、「バッカスの巫女たち」
Ⅱ…「キクラデス諸島の偶像」、「黄色い花」、「夕食会」、「楽団」、「旧友」、
「動機」、「牡牛」
Ⅲ…「水底譚」、「昼食のあと」、「山椒魚」、「夜、あおむけにされて」、「遊戯の終わり」