ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

テッド・チャン あなたの人生の物語


内容(「BOOK」データベースより)
地球を訪れたエイリアンとのコンタクトを担当した言語学者ルイーズは、まったく異なる言語を理解するにつれ、驚くべき運命にまきこまれていく…ネビュラ賞を受賞した感動の表題作はじめ、天使の降臨とともにもたらされる災厄と奇跡を描くヒューゴー賞受賞作「地獄とは神の不在なり」、天まで届く塔を建設する驚天動地の物語―ネビュラ賞を受賞したデビュー作「バビロンの塔」ほか、本邦初訳を含む八篇を収録する傑作集。



読了日:10/18

 SFとはいっても、異星人の使用する未知の言語による認識や数学の内部矛盾など哲学的な問題がテーマの思弁的SF短篇集。評価の高い作品だけど、個人的には合わなかったかなー。つまらないというわけでは決してなく、ひとつの問題について思考を展開していく過程が作品の骨子というスタイル自体があまり求めてるものではなかった。長編ならまだいいけど短篇集ではどこか息苦しく感じる。思弁的といっても決してドライな作風ではなく、叙情的描写もしっかり盛り込まれているんだけどね。好きな人にはたまらない短篇集だと思う。
 情景や舞台背景が魅力的な「バビロンの塔」や「地獄とは神の不在なり」は幻想的な美しさもあり楽しめた。「バビロンの塔」の落ちはちょっと弱いかなぁと思うけど、塔の描写がおもしろい。「地獄とは~」は、天使が頻繁に人間界に現れては無差別に災害や奇跡をまき散らしていく存在として描写されていたのが印象的。天使・神はあくまで超越的な存在であり、意思の疎通も理解もおよばないところにいる、というドライさがよく伝わってくる。表題作も因果的認識と目的論的認識という話はおもしろかったし、思弁的パートとリリカルな美しさを持つ二人称パートが交互に語られる構成のたくみさなど、評価の高さは頷ける。

バビロンの塔、理解、ゼロで割る、あなたの人生の物語、七十二文字、人類科学の進化、地獄とは神の不在なり、顔の美醜について―ドキュメンタリー、作品覚え書き