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ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

アントニイ・バークリー 毒入りチョコレート事件

感想 ミステリ


読了日:1/20


 夫が偶然もらって帰ってきた知人あてのチョコレートを食べた夫人が毒殺された。迷宮入りかと思われたこの事件について、作家兼探偵シェリンガム率いる犯罪研究会の各メンバーはそれぞれの推理を披露していくことにする。
 6人のメンバーがいれば6通りの推理方法があり、それぞれ着目点も違う。推理の方法すらそれぞれのパーソナリティに左右されているのだから、当然情報の取捨選択や残した情報のつなげ方は一見客観的に見えても主観的思惑がこもりまくっている。結果彼らの推理は一見成り立っているように見えても新たな視点からの指摘で簡単にくつがえされてしまう。推理と言いつつもそれは各自の描いた想像上のストーリーでしかない、ということをバークリーは戯画的に描く。最後には一応謎は解けるが、それまでの流れからするとこの結論だってひっくりかえる可能性はありそうだし。
 ごちゃごちゃ書いたけど、それぞれの性格にあった推理とそのバラエティ豊かさは読んでて楽しい。序盤の推理はかなり素朴だが、中盤以降は手がかりも増え厚みをましていくので読み応えがある。私はシェリンガムの推理が好き(同じ犯人を予想してたのでひいき気味)。ひねくれていてもエンタメ性はしっかりあるのがバークリーのいいところだなあ。犯罪研究会内の人間関係も皮肉な目で描かれていてにやりとさせる。