ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

ルイジ・ピランデッロ 月を見つけたチャウラ


読了日:12/1


 「突然訪れる人生の真実の瞬間を、時に苦々しく時にユーモラスに描く短篇集」と紹介されているが、私にとってはかなり苦く、不安をかきたてられる本だった。どれも短い話で幻想的なものから滑稽話までアイディアは幅広いが、そこかしこに覗く、人生の不条理さや理解を超えた何かがぱっくりと口を開ける様が恐ろしい。苦いといってもサキの短編などの苦さなら突き放した冷静さによるものだしある種の爽快さもあるのだが、この作品の苦さは作家本人の人生に対する不信、疲れや諦観から湧いて出ているようで切々と苦い。その分共感はするのだけど。確かにユーモラスなところも多々あるが、それをユーモアとして受け止める余裕は自分にはなかったかな。この作品の苦さとユーモアのバランスは、読む人によって大分感じ方が変わるのではないかという気がする。私自身の感じ方もきっとその時によって変化していくと思う。

月を見つけたチャウラ、パッリーノとミミ、ミッツァロのカラス、ひと吹き、甕、手押し車、使徒書簡朗誦係、貼りついた死、紙の世界、自力で、すりかえられた赤ん坊、登場人物の悲劇、笑う男、フローラ夫人とその娘婿のポンツァ氏、ある一日