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ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

クリスティーナ・メルドラム マッドアップル


読了日:1/31


 母を毒殺し、その後引き取られた伯母の家で伯母といとこにも同じ毒を飲ませ家に火を放ったという疑いをかけられた少女アスラウグ。異様な事件の真相とは。
 処女降誕、魔女的な薬草・毒草についての知識、古代の異教をからめたキリスト教についての薀蓄など、おどろおどろしい雰囲気の割に良くも悪くも素直な話だったという印象。法廷シーンとアスラウグの回想が交互に語られる形式で、縦糸と横糸が重なりあって少しずつ事件の全容のタペストリーが織り上がっていく。「素直」という感想は、異様な環境に置かれながらも寛容でまっすぐなアスラウグの性格と、この話の重点が事件の真相解明よりもむしろアスラウグの成長(もしくは救済)に置かれているように感じたところからくるものだと思う。事件の真相については仰天するようなオチや仕掛けがあるわけでもないし、読者をけむにまこうという意図もあまり感じない。ミステリとして読むには弱いだろう。しかしどうしてこうなってしまったの?という興味は湧くし、続きが気になって一気に読めた。読後感はほんの少しほっとするというか、よかったね、と思う。みんなどこかしら歪んでいる、でも歪だからといって愛や善を抱いていないわけではない。母にしても伯母にしてもアスラウグにしても。
 あと、私は植物やオカルト系に関する薀蓄が好きなので楽しめたけど、そうでない人には辛いかも。序盤の方の母娘の魔女めいた暮らしぶりとか、実際想像すると悲惨なのだがわくわくする。そういえば魔女裁判を思わせる作品なのに魔女という言葉は全然出てこないな。