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ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

牧野信一 風媒結婚 (日本幻想文学集成)

感想 国内 幻想



読了日:2/12


 センター現文で話題になってたマキノさん。といってもこの本には出題された「地球儀」ははいってませんが…岩波の『ゼーロン・淡雪』だけ以前に読んだことがあって、日本の土俗的な情景の中にふらっと西洋の幻想がまじりこむ独特の幻想的で奇天烈な作品が印象的だった。
 収録作の半数近くが岩波のとかぶっているため、いくつかは飛ばして読んだ。(かぶってないのは「風媒結婚」「夜の奇跡」「痴酔記」「風流旅行」「バラルダ物語」)「風媒結婚」のだめっぷりが愛しい。女性を遠くから望遠鏡でのぞくのは好きだがいざ近くに接すると大して興味はないという…私も男ならこれに近いタイプだったんじゃないかな…
 「繰舟で往く家」では恋人と川で隔たれているし、「夜の奇跡」では恋する相手は人形、と、女性を(あえて近づかずに)遠くから恋うる、その憧憬の甘美さは切なくも美しい。一方で、「鬼涙村」など、閉鎖的な村のうちでの人びとのグロテスクさを見せつけられる作品は滑稽に描かれている分よけい痛ましく感じる。最後の「バラルダ物語」は独特の、境界をぐにゃりと曲げる酩酊したような幻想味が発揮された作品で、水の轟音と叫声の中に突入していく怒涛のラストがカタルシス。

「操舟で往く家」「風媒結婚」「夜の奇跡」「痴酔記」「吊籠と月光と」「淡雪」「月あかり」「鬼涙村」「風流旅行」「バラルダ物語」