ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

パーシヴァル・ワイルド 検死審問ふたたび


 傑作ユーモアミステリ『検死審問―インクエスト』の続編。前作は展開の鮮やかさ、語りの上手さ、軽妙なユーモアと魅力たっぷりの小気味いい作品だったけど、続編も期待に違わず素晴らしかった。特にユーモアに関しては前作をしのいでるんじゃないかな。エンタメとして完成されたユーモアミステリ。すかっとするようなおもしろいものを読みたいなぁというときにはぴったり。
 田舎町の検死官、リー・スローカムが一応探偵役をつとめるのだが、これが「法廷が長引けばその分日当が増える!すばらしい!」的なことを言っちゃう大らか?なお人。そして陪審員もまたそれを聞いてよっしゃー!と言いかねない、なんというかとても気さくな方々で構成されててすてき。菌類に関する専門用語を駆使しまくるキノコ好きの婦人が証人として出てきてその証言に法廷がはてなマークで包まれたり、語学にこだわっているらしい語り手がそれに対抗心を燃やして彼女の証言に必死に註釈をつけたりするのもすてき。(ちなみにこの語り手ことミスター・イングリス、やたら細かいことを気にするインテリ気取りさんで、実際にいたらあまりお近づきにはなりたくないタイプだけどフィクションのキャラとしてはチャーミング。というかこの手のキャラ好き。)まぁ、こんな感じのざっくばらんでほんのりブラックなユーモアがすごく居心地いい。
 ミステリとしては、謎そのものはそんなに興味を惹かないけれど、伏線の張り方は上手いし結末もちょっとひねってあってなかなかどうしてあなどれない。おもしろさににやにやしながらあまり考えずに読んでるとあー!と言わされます。実体験。