ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

南條 竹則   怪奇三昧 英国恐怖小説の世界



 南條竹則さんによる怪奇・幻想文学のブックガイド。『恐怖の黄金時代』に加筆+新原稿を加えたものだそうな。紹介されている作家はブラックウッド、マッケン、ラヴクラフト(ダンセイニ)、M.R.ジェイムズ、メイ・シンクレア、M・P・シールとジョン・ゴーズワース、ウェイクフィールド、リチャード・ミドルトン。主に怪奇小説黄金時代の有名作家の紹介です。作者の紹介、作品解説、日本の作家への影響、ちょっとした小話などを織り交ぜ、かたすぎないながらも読み応えも有り。M・P・シールとジョン・ゴーズワースの「レドンダ島の王たち」と題した章なんかは、レドンダという小さな島とその王位をめぐる話なんだけれども、えっこれノンフィクションなの?と言いたくなるおもしろさ。ある王の遺灰を砂糖と間違ってお茶に入れてみんなで飲んじゃった話とか。おいおい。あと、付録としてラヴクラフトなどの翻訳も少しついてます。おとく!
 リチャード・ミドルトンの紹介があるのもうれしいです。この人はメジャーどころではなくマイナーポエットと呼ばれる類の作家のようだけど、好きな人は好きなんじゃないかなぁ。この本の中でも、ひときわ南條さんの愛情を感じる章だったように思う。国書刊行会の魔法の本棚シリーズから出ていた『幽霊船』(とてもきれいな本です)の解説でもミドルトンの人物について多少は紹介されているけれど、そこから勝手に想像していた人物像とこの本で紹介されている人となりとはまたちょっとずれがあった。思っていたよりもさらに不器用な人だったんだなと。