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ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

アーシュラ・K. ル=グウィン   コンパス・ローズ

感想 海外 SF




 ル=グウィンのSFを読むのは二冊目。前に読んだのは『なつかしく謎めいて』。短篇集好きなのでつい短篇集に手を出してしまう。ハイニッシュサイクルもそのうち読まなくては。
 この『コンパス・ローズ』は70年代あたりの作品がはいった短篇集。題名に合わせて、方角の名がついた章で分けられてはいるが、各短編に具体的なつながりはない。SFの他に純文的なものや幻想文学系のものも多くはいっていて、作風自体がかなり幅広い。読んでいるうちはその幅広さに追いつけなかった感がある。でも、読了後目次を眺めていると、なんだかひとつの地図が頭のなかで組み合わされていくような気もする。人の精神が生み出す(とらえる)世界の広さ、あるいは狭さ。短い話も多くてすっと流してしまいそうになるのだが、どの話も油断ができない感じ。
 あと、解説でも触れられているように、ところどころにフェミニズムを感じる。イントラコムなんかはそれを上手いこと料理してるなぁ。『なつかしく謎めいて』には特にあからさまなフェミニズムを感じなかった気がするので、少し驚いた。まぁ、大分後の作品だもんね。
 好きな話は、幻想文学よりの「小銭」とか「“ダーブのカダン”星に不時着した宇宙飛行士の最初の報告 」とか。特に前者は夢のなかのような歪んだ感覚の描写の上手さとユーモアが合わさって、短い話なのに印象に残る。「湖面は広い」も幻想的。正直何が言いたいのかはよく分からないのだけど、後半の夢に溶けていくかのような流れが好き。SF寄り作品のなかでは「ニュー・アトランティス」。深海の描写が大変美しい。これも謎が多い作品だけど、そこも合わせて魅力的。特に、海中パートの人称の使い方が気になる…。なぜ頑なに”わたしたち”を使うのか。想像が膨らみます。