ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

イーヴリン・ウォー 愛されたもの / スティヴンソン 旅は騾馬をつれて


イーヴリン・ウォー 愛されたもの


 アメリカの葬儀産業界隈での奇妙な三角関係を描いたブラックユーモア小説。そのブラックさはかなりえげつないところもあるのだが、こうも抑制のきいたドライな筆致で書かれると優雅な印象さえ受ける。しかし、最後の場面は詩的といってもいいくらいの余韻を残す、この一抹の感傷とのバランスが絶妙。「大転落」もそうだったなぁ。

 

スティヴンソン 旅は騾馬をつれて


「宝島」の作者スティヴンソンの若き日の旅行記。騾馬のモデスティイヌをつれてフランスの山地を旅する表題作と、友人と二人でカヌーでオアーズ河を下る「内地の船旅」の二作をおさめる。
 表題作の方は寝袋を騾馬に積み山地をひたすら歩いて、夜は寝袋で野宿もしくはそこらのひなびた宿屋に泊まるという、なんともクラシカルな旅。序盤のモデスティイヌとのコミカルなやりとりが楽しいのだけど、上手く扱うすべを学んでからはモデスティイヌの出番は少なくなるのが寂しい。中盤以降は豊かな風景描写、文明社会から遠く離れた地の人々の素朴さに開放感を感じる。しかし旅の終わりはあっけなく訪れるなぁ。
 「内地の船旅」は泊まる村々の宿屋評価付き。しかしこれが参考になることは今後まずあるまい。こっちは村人との交流多めだけど、スティヴンスンは結構辛辣なところもあるので、人物描写はあまり好きではないかも。