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ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

桑原 弘明 Scope / 桑原 弘明,巖谷 國士  スコープ少年の不思議な旅

感想 写真集 幻想

桑原 弘明 Scope



巖谷 國士 , 桑原 弘明  スコープ少年の不思議な旅




 掌にのる小さな金属製の箱。取り付けられている筒から中を覗くと、そこには小さな部屋が、庭が、世界が広がっている。桑原弘明の手による、このスコープという不思議なオブジェの写真集。
 スコープの中の世界の多くは何の変哲もない部屋だけれど、奥の扉がほんの少し開いていたり、さっきまで誰かが居た形跡があったり、どこか謎めいた静けさが漂っている。そこにはほんの少し不穏な空気も感じるけれど、この世界では自分は守られているという安心感もある。世界が秘密を少しだけさらけ出すその瞬間、たとえその秘密の意味がわからなくても、世界は私と親密なものであるから。まるで子供の頃のような。スコープを覗く時、大抵の人は子供時代に引き戻されてしまうんじゃないだろうか。どこか疼くような強烈な懐かしさ。そしてその甘美さには、秘密を覗くという官能性も少なからず加わっているはず。
 平凡社の「Scope」の方が写真が大きく、最近の作品まで見ることができるけれど、風濤社の「スコープ少年の不思議な旅」では巖谷國士の文章が不思議な世界の道案内をしてくれる。ただ、どっちかを気に入ったらもう片方もすぐ買っちゃう確率は高そうな気が。