ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

アントニイ・バークリー レイトン・コートの謎 / エドマンド・クリスピン 愛は血を流して横たわる

アントニイ・バークリー レイトン・コートの謎


 レイトン・コートの主人スタンワース氏が書斎で額を撃ち抜かれて亡くなっているのが発見された。書斎は密室状態であったのと、彼がリボルバーを手にしていたことから自殺と考えられたが、レイトン・コートに滞在中だった小説家ロジャー・シェリンガムは自殺説に疑問をいだき、友人を助手に素人探偵活動を始める。 
 迷探偵でおなじみロジャー・シェリンガム物の第一作。一作目からすでにバークリーのミステリに対するスタンスはしっかり出てたのだなぁ。というわけでシェリンガムが推理し突っ走っては失敗する様子が楽しめます。ミルンの赤い館の秘密を意識しているらしく、全体に他の作品に比べて大らかというか朗らかで、助手の友人とのやりとりもコミカルでいい。映像化したらとても楽しそう。シェリンガムの思惑が外れた瞬間の顔とか見てみたい、特に終盤の。プリンスのくだりなんかは分かってても笑ってしまうし。愛すべき古典作品といった風格。





エドマンド・クリスピン 愛は血を流して横たわる


 旧友が校長を務める男子校の終業式に来賓として招かれたオックスフォード大学教授のジャーヴァス・フェン。化学実験室からの盗難、劇に出演する予定だった他校の女子生徒の失踪など、以前から不穏な出来事が起こっていた同校だが、その日、教師二人が別々の場所で射殺される事件が発生する。
 一見メロドラマっぽいタイトルだけれども、実際は学校を舞台にした軽妙な古き良き英国ミステリ。キャラ造形とかところどころ甘く感じる部分はあるけれど、ユーモアのある大らかな雰囲気は良い。どたばたカーチェイスもあります。しかしあれをまともにトリックに使った長編ミステリは初めて読んだ気がする。