ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

ピエール・シニアック ウサギ料理は殺しの味 / リンジー・フェイ ゴッサムの神々 上・下


ピエール・シニアック ウサギ料理は殺しの味


 車の故障でしばらく田舎町に滞在することになった私立探偵事務所の職員シャンフィエ。そこではレストランのメニューにウサギ料理が載ると若い女が殺される、という奇怪な事件が起こっていた。
 ブラックユーモアに満ちたフランスミステリ。いやまぁ謎解き小説という意味でミステリ。いやはや。登場人物の大半が性欲と食欲にしたがって行動してるのがむしろ清々しい。謎の真相自体も突っ込みどころ満載だけど、解けた後の展開ももうね。乾いた笑いしか出ないね。楽しかったです。




リンジー・フェイ ゴッサムの神々 上・下



 1840年代ニューヨーク、バーテンダーをしていたティムは火事によって顔面に酷いやけどを負った。仕事を失ったティムは、兄によって無理やりニューヨーク最初の警官たちのうちの一人にさせられる。そして血まみれのネグリジェの少女との出会いから、多数の切り裂かれた子どもたちの遺体を掘り出すことになる。
 事件の捜査もティムの人生の模索も着実に描かれていて好印象。ところどころまだ少しかたいというかぎこちないところもあるけれど、丁寧さと熱気のバランスいいなぁ。背景については、当時のニューヨークの時代考証の正確さは分からないが、ビジョンは鮮やか。映画を見ているようなトリップ感がある。まだ暗いニューヨークの夜の中、押し寄せる差別や絶望にも足を踏ん張り前に進む人びとの姿が目に焼きつくよう。
 あとものすごく蛇足ですけどやはりブラコンとはいいものだと思いました。