ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

一言感想まとめ


キャサリンマンスフィールド マンスフィールド短篇集


 みずみずしい文章と感性にゆらゆら揺れる。その揺らぎは時に幸せのさなかから死や絶望、容赦の無い現実へとも大きく振れ、ざくりと心をえぐっていく。逆もないわけではないけれど。しかし何度えぐられようと読むのをやめられない怖さ。影と入り混じる光のなんとまぁ眩いことか。好きです。




佐々木 丸美 崖の館


 資産家のおばの住む人里離れた崖の館で休暇を過ごすいとこ達。雪に閉ざされた館の中で奇妙な事件がおこりはじめる。そこには二年前のもう一人の美しいいとこの死の謎がからんでいた。
 少女視点のとてもリリカルな文章が印象的。絵画や文学についての衒学が織り交ぜられた演説口調の会話もあいまって、独特の世界を作っている。合う合わないがぱきっと分かれそうな作風。残念ながら私は合わない方だった。しかし浮世離れした雰囲気にもかかわらず食べ物が庶民的で、かつ美味しそうなのはいいなぁ。




マリア・グリーペ 忘れ川をこえた子どもたち


 ガラス職人の二人の子どもたち、クララとクラースは、市でさらわれ忘れ川の向こうの奇妙な町のお屋敷で育てられることになる。
 お話の骨格や諸々のモチーフは民話的なものの、ひっそりと硬質な静かさや現代的な心理描写が独特の味を生んでいる。不思議な佇まいの美しさ。