ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

ジョーン・G・ロビンソン 思い出のマーニー


ジョーン・G・ロビンソン 思い出のマーニー



 学校にうまくなじめないアンナは、養母のはからいで田舎の海辺で早めの夏休みを過ごすことになり、そこで湿地の大きな館に住む少女マーニーと出会う。少女の一夏の不思議な友情と成長の物語。
 あらすじだけを書くとありきたりな感じになってしまうなぁ。よかったです。広々とした浜辺、湿地に面した大きな館、入江を渡る一艘のボート、と児童文学にしては少しもの寂しいが開放感のある情景が好き。
 そして二人の、互いに承認しあい秘密を共有する、ちょっと神聖さすら感じる思春期以前の独特の関係がまぶしい。人たらしの気があり可愛らしいけれど、家庭で十分な愛情を得られていなさそうなマーニー、周りの大人に愛されてはいるのに、自分は常に輪の外側にいると感じている不器用なアンナ。二人の友情は結末が半ば見えているだけに切ない。ただ、それはアンナの成長の礎になり、アンナを支え続けるのだと思えば。寂しさもあるけれど、読後感は爽やか。