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ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

マイケル・オンダーチェ 名もなき人たちのテーブル

マイケル・オンダーチェ 名もなき人たちのテーブル



 11才の少年マイナは、客船オロンセイ号に乗り込みスリランカから英国へ向かう船旅に出る。オロンセイ号での彼の食卓は、キャッツテーブルと呼ばれる船長から一番遠い席であり、いわば取るに足りない人びとの集まるテーブル。同い年の少年たちと船内を駆けまわったり、一緒にキャッツテーブルを囲む大人たちと交流したり、無邪気な楽しい日々のようでいて、船内では不穏な動きもあり、それは彼も含めて様々な人の人生を変えた旅でもあった。
 物語は大人になったマイナが当時を回想する形で語られるが、11才のマイナの視線と、当時を回想する現在のマイナの視線が入り混じり、少年だから見える光、今の彼だから見える陰が合わさって再構成されていく。子供時代の最後の日々の美しさ、しかしそこにすでに染み込み始めている人生の奇妙さかなしさ。当時の大人たちの抱えていた(生きていく上ではきっと不可避な)弱さや傷を、現在の彼もきっと抱えている。
 何回でもいうけど子供時代の終わりってテーマに弱いうえ、文章もエピソードも素晴らしいし、悔しいけど(?)とても好きです。