ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

一言感想まとめ

池澤春菜 乙女の読書道


 翻訳SF、ファンタジーに特化したレビュー集。何というかこってりがっつりなセレクトですね。意外にジャンルかぶってるようでかぶってなかったため、未読の作品が多く勉強になった。ダイアナ・ウィン・ジョーンズウッドハウス以外はほとんど未読だった気が。文章は軽く、テンション高めで活字中毒っぷりがひしひしと伝わってくる。今度「タフの方舟」を読んでみたい。




平田真夫 水の中、光の底


 『乙女の読書道』紹介の一冊。水と光が織りなす日常幻想。海の上を走る電車、地下室に広がる矩形の海、カフェの窓越しに見える雨で水没した街の景色…正直目新しい物ではないし、文体もはじめはまだるっこしいなぁと思っていたものの、読んでるうちにその生ぬるい温度感がくせになってくる感じ。一気読みするよりちびちびと読む方がいいかもしれない。
 森山安雄名義で『展覧会の絵』というゲームブックを出されてるらしいですが、こちらもおもしろそう。



ギョーム・アポリネール 贋救世主アンフィオン


 ドルムザン男爵の人を喰ったような話をつづる、黒い笑いと幻想に満ちた短篇集。ちなみにほんとに人を喰ってたりする。内容はちょっとえぐいのもあるけれど、語り口はあくまで軽く、葉巻の煙のように黒い虚空に消えていく。粋ですね。各話のタイトルページの挿絵も雰囲気ぴったりでよいです。