ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

中村 融編  街角の書店 (18の奇妙な物語)

中村 融編  街角の書店 (18の奇妙な物語)



 ミステリ、SF、怪奇をベースにブラックユーモアを効かせて読後にいわく言いがたい奇妙な味わいを残す「奇妙な味」と呼ばれる類の短篇を集めたアンソロジー。この本は比較的怪奇より。奇妙な味の作品って、そのドライさビターさのおかげでいつ読んでも読みやすいというかニュートラルな状態に戻してくれるので好きです。お口直しにもおすすめ。
 収録作品は有名作家からマイナー作家までとりどりだけど、どの作品もそれぞれにおもしろくいい意味でとても安心して読める。並び順もよくて、最初はアクセルをひたすら踏み込み、あとは緩急ありカーブあり小休憩ありのドライブ、最後の最後で「あちら」に向かってアクセルぶっぱの爽快感。この並び順、解説読むまで気づいてなかったんだけど、実は超自然の要素の具合によってグラデーションになってるんだとか。
 どれも良かったけどお気に入りを挙げるならジョン・アンソニー・ウェスト「肥満翼賛クラブ」、ハーヴィー・ジェイコブズ「おもちゃ」、ロナルド・ダンカン「姉の夫」、ケイト・ウィルヘルム「遭遇」。「遭遇」のSF的解釈って何なのか気になる。


ジョン・アンソニー・ウェスト「肥満翼賛クラブ」
イーヴリン・ウォーディケンズを愛した男」
シャーリイ・ジャクスン「お告げ」
ジャック・ヴァンス「アルフレッドの方舟」
ハーヴィー・ジェイコブズ「おもちゃ」
ミルドレッド・クリンガーマン「赤い心臓と青い薔薇」
ロナルド・ダンカン「姉の夫」
ケイト・ウィルヘルム「遭遇」
カート・クラーク「ナックルズ」
テリー・カー「試金石」
チャド・オリヴァー「お隣の男の子」
フレドリック・ブラウン「古屋敷」
ジョン・スタインベック「M街七番地の出来事」
ロジャー・ゼラズニイ「ボルジアの手」
フリッツ・ライバー「アダムズ氏の邪悪の園」
ハリー・ハリスン「大瀑布」
ブリット・シュヴァイツァー「旅の途中で」
ネルスン・ボンド「街角の書店」