ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

ウィリアム・アレグザンダー 仮面の街


ウィリアム・アレグザンダー 仮面の街


 魔女グラバの家で暮らしていた少年ロウニーはある日、街で禁止されている芝居を上演するゴブリンの一座に出会う。どうも彼らはロウニーの行方不明の兄のことを知っているらしい。一座に加わり魔女グラバから逃げまわるうちに、ロウニーは芝居に使われる仮面と街の秘密を知っていく。
 機械仕掛と魔法が混在する、スチームパンクな風味も感じるファンタジー。語り口は児童文学だけれど説明し過ぎないし、死の影がちらりとのぞくところ、物語の中心となる謎に文化人類学的なものがからんでいるところなど、大人になってから読んでも読み応えがあると思う。物語の鍵となるのは仮面、その魅惑と怖さが上手く織り交ぜられているなあ。舞台となるゾンベイ市も、雑然とした路地や巨大な橋とその上の時計塔、地下の駅に港と、どれも魅力的に描写されていて楽しい。表紙買いなのですがとてもよかった。完全には解決してない謎もある感じですが、それは姉妹編を読めばいいのかな。