ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

2015年ベスト10冊(前半)

 あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いいたします。去年は随分記事数が少なくなってしまったので今年はもうちょっと頑張りたい所存です。
 さて、2015に読んだ本の中から10冊、読んだ順での紹介です。まず前半。



1 エリザベス・ボウエン「ボウエン幻想短編集」

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 このごろ集中力の低下か本にのめりこむ、ということが少なくなったのですが、この本にはかなり入り込んだ気がします。幻想短編集とうたっていますが幻想以外の描写も魅力的なので幻想好きの方にもそれ以外の方にも。にじみ漏れる意識・無意識のエーテルに浸された世界は危うくも心惹かれます。


2 ジュリアン・グラック「アルゴールの城にて」

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 ブルターニュの森と海と古城を舞台に、筋書きとしては三人の男女の恋愛劇が展開される話なのですが、なにせ登場人物の会話は一切描かれないし恋といってもかなり宗教的な感情のように思われます。比喩を重ねた静かだけれどもとどまることを知らない文章は作品世界を表象と予感で塗り尽くし、読んでるこちらも作品世界の中に塗り込められてしまったかのような息苦しさと陶酔を覚えるほど。礼拝堂のシーンの美しさは類を見ないです。


3 ボルヘス「永遠の歴史」

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 ボルヘスってマッチョな面もあるし今まで好き!ってほどではなかったんですが、これはおもしろかったのと同時にちょっとボルヘスへの好感度が上がった本。時と永遠についての評論集のようなものですが、「原型とその反映」が共通主題で、ボルヘスの世界観というか創作への態度がすけて見えるように思います。


4 ジーン・ウルフ「ピース」

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 ジーン・ウルフの書く幻想文学ケルベロスやデス博士の様な華々しさではないですが、じんわり飲み込まれていく恐怖、作品のタイプとしては個人的にはこっちの方が好みですね。終始薄明かりの中にいるような。終わり方がとても好き。


5 フラン・オブライエン「スウィム・トゥー・バーズにて」

 まだ感想書いてなかったんですがおもしろかったです。作家の主人公が書いた小説の主人公がまた作家で、彼が作品の中でつくりだした登場人物たちが自分の意志で行動をはじめて…というメタな作品。この入れ子構造の中で、アイロニーと背中合わせのユーモア、俗っぽさと時折覗く哀愁、アイルランドの神話・民話のエピソードが、酔ったようなしかし生気のあるリズムで煮詰められていく豊穣さ。