読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

ロード・ダンセイニ 中野 善夫訳  ウィスキー&ジョーキンズ

感想 幻想 海外

ロード・ダンセイニ 中野 善夫訳  ウィスキー&ジョーキンズ


 密林に潜む幻の獣、摩訶不思議な魔術、秘密の宝物、魔性の女性…しがない英国のビリヤード・クラブの名物、ウィスキーがあればいくらでも信じがたい驚異の物語を(あくまで実話として)語り出すジョーキンズの物語集。
 現代ファンタジーの源流とも言われるダンセイニ、代表作の「ペガーナの神々」や「エルフランドの王女」の香り高く目が眩むばかりに美しい幻想世界は確かに彼の真髄ではあるのですが、ファンタジーや翻訳小説にあまり馴染んでいない人にとっては戸惑うこともあるかもしれません。なので、ダンセイニを初めて読むならちょっととぼけた味のあるこのジョーキンズシリーズの方がいいのかなと思ったり。もともとダンセイニって作品世界を緻密に構成していく人というよりも神がかった魔法の語り部という印象なのですが、ジョーキンズシリーズは特にそれが前面に出ていて読んでいてとても楽しい。笑いどころもわかりやすいし。そしてこっち側よりの作品ではあるけれど、時に果てしなく遠いところまで連れて行ってくれる、あの魂持っていかれるようなトリップ感も仄見える。これでもっと世界の涯まで根こそぎ魂持って行かれたいと思われた方は河出文庫の方もおすすめ。
 人によって好きな話が色々違うみたいでおもしろいなあと思うのですが、ダンセイニらしい幻の都市の描写の美しさとオチに対する個人的共感から、「ジョーキンズ、馬を走らせる」が私は一番好きです。何かイギリス人らしさを感じてしまうコミカルな「流れよ涙」も好き。