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ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

多田 智満子  鏡のテオーリア

多田 智満子  鏡のテオーリア



 鏡をめぐる哲学エッセイ。古今東西の該博な知識をもとに、あくまでも軽やかに展開される文章の心地よさ。日本の宗教と鏡の縁の深さなんて、なぜか全く意識してなかったので新鮮だった。
 また、鏡がテーマということからイメージを呼び起こすところも多く、視覚的にもとても美しいエッセイ。水面の虚空に穴を穿つ釣り人、無限の摩尼宝珠がさらに互いを反射しあう無限の反復などのイメージは、鏡のくらりとするような一瞬の幻惑とその虚無を鮮やかに映しだしている。特に水鏡は筆者の好むところらしく、詩集「長い川のある国」でもそのイメージが印象的に使われていたことを思い出した。