ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

ウィリアム・サローヤン 柴田 元幸訳  僕の名はアラム


ウィリアム・サローヤン 柴田 元幸訳  僕の名はアラム



 アメリカの片田舎、アラムという名の9歳の男の子の周りで起こるユーモア溢れるあれこれのお話。フィクションともノンフィクションともつかない、古いけれども古びない、不思議な時間が流れる短編集です。主人公アラムも大概手を焼かされそうなお子さんだけれど、彼の一族も独特の誇りを持った少し変わった人びとであり、児童文学によく出てくる感じのだめなおじさんがいっぱい出てくるので特にそういうフェチの人にはとてもおすすめ。特に「ザクロの木」のおじさんは素晴らしい。
 お話の一つ一つは(いい意味で)あほらしい騒動ばっかりだけれども、世界が美しかった頃の陽の光や大地の温かさや草の香りや、そんなものを永遠に閉じ込めたかのようなまぶしさがあり、読んでいると自然と呼吸が楽になってくる。なおかつその美しさが全く鼻につかないのがまた得難いところ。