ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

カルヴィーノ作 和田忠彦訳 パロマー

カルヴィーノ作 和田忠彦訳 パロマ


 波や女性の胸や星空や、様々なものを観察しては考察し自分と宇宙との関係を模索する中年男性パロマー氏。いわば彼の観察日記のような27の短篇がそれぞれの主題に応じて3つの番号を割り振られ系統立てて並べられていて、目次を見るだけでおっカルヴィーノっぽいな、とにやけてしまう。それぞれの事物についての彼の考察はごく生真面目で哲学的なもので、最初はとっつきづらい印象だけれど、何だかどこかずれているところに愛嬌と哀愁が。終盤までいくと、彼がどうしてここまで真面目に世界を観察するのかについても書かれるが、やっぱりそういうひとだよね…と切なくなった。自分もいくつになっても手さぐりなままなんだろうな。
 はじめヴァレリーのムッシュー・テストを思い起こしたけれど、パロマー氏は愛嬌と共感がある分あっちよりは読みやすい。というかテスト氏途中で放置したままなので再挑戦しなければ。