ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

J・G・バラード ヴァーミリオン・サンズ



読了日:11/4

 ヴァーミリオン・サンズと呼ばれる砂のリゾート地を舞台にした短篇集。かつては豪奢だったものの今はすたれかけてきたリゾートにただよう虚無感と、鮮やかだがどこか生気のない色彩、けだるい暑さ。話のパターンは大体影の薄い(失礼)男性主人公が病んだ美女に振り回され破滅的なクライマックスを迎え、また日常に戻っていくというファム・ファタルもの。読んでるだけでこっちもけだるくなってくる倦怠感と退廃感。
 いくつかは創元のバラード短篇集にもバラバラに収められているので今回は未読のものだけ読んだ。「風にさよならをいおう」の永遠のティーンエイジャー、レイン・チャニングが好き。ベタだけどあどけなさそうな仮面の裏の残酷さっていうのはいいですよね。容姿のイメージとしては「ヴィーナスはほほえむ」のロレイン・ドレクセルも捨てがたい。各ヒロインの名前の響きも素敵だな。レオノーラ・シャネル、ジェイン・シラシリデス、エメレルダ・ガーランド、ルノーラ・ゴールン、ホープ・キューナードetc。
うん、頭空っぽにして美女たちの魅力を楽しんでました…


「コーラルDの雲の彫刻師」「プリマ・ベラドンナ」「スクリーン・ゲーム」「歌う彫刻」「希望の海、復習の帆」「ヴィーナスはほほえむ」「風にさよならをいおう」「スターズのスタジオ5号」「ステラヴィスタの千の夢」