ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

2017-01-01から1年間の記事一覧

伊藤 計劃  ハーモニー

伊藤 計劃 ハーモニーハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA) 「大災禍」という世界的危機以降、人類は人命・健康を何よりも優先し病気のないユートピアを築き上げた。善意に溢れたというよりも善意しか許されない、個々人の生命は社会的リソースとして大事に…

フリオ・リャマサーレス著  木村 榮一訳 黄色い雨

フリオ・リャマサーレス著 木村 榮一訳 黄色い雨黄色い雨 (河出文庫) スペインの山奥の廃村アイニェーリェ村、かつての村人がみな逃げるように去った後もただひとり村にとどまった男の孤独な日々。飾らない静かな文章から滲み出すのは死と狂気の気配、狂気と…

高山 宏 殺す・集める・読む / 小栗 虫太郎 黒死館殺人事件

高山 宏 殺す・集める・読む殺す・集める・読む―推理小説特殊講義 (創元ライブラリ) ホームズ、チェスタトン、クリスティらの錚々たる作品に文化史的視点から新たな光をあてるミステリ論。たとえばホームズを世紀末的感性から見つめ直した時、彼らの華麗な冒…

レイナルド・アレナス著 安藤哲行訳 夜明け前のセレスティーノ

夜明け前のセレスティーノ (文学の冒険シリーズ)レイナルド・アレナス著 安藤哲行訳 夜明け前のセレスティーノ 母は井戸に飛び込み、祖父は斧を振りかざし、いとこのセレスティーノは木という木に詩をきざむ。村からはのけものにされ、貧しさと憎しみが吹き…

カルヴィーノ作 和田忠彦訳 パロマー

パロマー (岩波文庫)カルヴィーノ作 和田忠彦訳 パロマー 波や女性の胸や星空や、様々なものを観察しては考察し自分と宇宙との関係を模索する中年男性パロマー氏。いわば彼の観察日記のような27の短篇がそれぞれの主題に応じて3つの番号を割り振られ系統立て…

2016年ベスト10冊(後半)

(6)アンナ・カヴァン 鷲の巣鷲の巣 満たされない日々を過ごし人生への絶望に陥りかけていた語り手のわたしは、過去に世話になっていた人物「管理者」が新聞に求人を出しているのを見かけ、そこに最後の希望をたくします。しかし、鷲の巣と呼ばれる管理者の…

2016年ベスト10冊(前半)

今更感がありますが2016年読んだ本ベスト10冊です。読んだ順。 (1)R・A・ラファティ 第四の館第四の館 (未来の文学) 『地球礁』『宇宙舟歌』に並ぶラファティの初期代表長篇だそうですが、この中だったら個人的にはこれが一番面白いと思います。「とっても…