ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

ジョナサン・キャロル 死者の書


読了日:1/13


 とある児童作家に惚れ込んだ主人公が、その伝記を書くためにその作家が晩年を過ごした田舎町を訪れる。しかしその町はどこかおかしかった…というダークファンタジー。主人公はなかなかにひどいやつだし性描写がやけに多いし物語の謎も分かりやすいしと不満点もあるんだけど、程よい緊張感が漂っていてぐいぐい読めた。一歩間違えるとばからしい話になりかねない筋書きだけど、文章の引力とキャラの生々しさがそこを上手くカバーしていると思う。主人公はとうていいいやつとはいいがたいがその小憎たらしさは人間臭い。他のキャラクターもどこかしら歪だがそこが生き生きしてる。最後にざくっと振り落とされるオチは予定調和的だが書き方が素晴らしい。