ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

由良君美 椿説泰西浪曼派文学談義 (平凡社ライブラリー)


読了日:2/23


 知識の乏しい私には名前しかしらんレベルの人がいっぱい出てきてあっぷあっぷ(特に絵画・音楽についてはお手上げ)、ではあったものの小気味いい文章のおかげで読み通せた。浪漫派の夢、ユートピア、廃墟、狂気…一見奇っ怪な産物に見えても、その背景を知ると生れるべくして生まれたんだなと納得。
 興味深かったのは、「四元素詩学-絵の具の言葉」のターナー論、「自然状態の神話」、エリアーデなどをからめてロマン派のエロス性を語る「ヘルマフロディトスの詩学」(コールリッジの『クリスタベル』を読みたくなった)、恐怖・伝奇小説の発生の背景についての「狂気と伝奇」など。
 あと、珍しくメモをとってあるのでちょっと引用。思わずにやっときたところ。あ、ここは例外的に対話形式になってるけど、他は普通の文章です。

”もともと芸術は、人間を、人間の根源のところに置き戻し、そこで全人となることを願って、発明されたものだろうからね”(p385)
”そうとも、その全人回復の場が、すなわち<祝祭>なのだ。だから、ワーグナーバイロイトを祝祭劇場と名づけた。
     分かったよ。ロマン派は、お祭り男たちなんだね?
     そのとおり。”(p385,386)



「類比の森の殺人」「夢のフーガ」「衆魔と夢魔」「四元素詩学-絵の具の言葉」「自然状態の神話」「サスケハナ計画」「ランターズ談義」「ベーメとブレイク」「啓示とユートピア」「ゴヤとワーズワス」「幻想の地下水脈」「ヘルマフロディトスの詩学」「ミミズク舌代」「悪夢の絵画―ヨーハン・ハインリッヒ・フュースリ」「イギリス絵画漫歩」「狂気と伝奇」「ゴシック風土」「ヴィクトリア時代の夜」「ロマン派音楽談義―ミメーシスを遠くはなれて」