ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

吉屋 信子 わすれなぐさ / ジョン・ファウルズ マゴット



 女学生三人の友情の行方を描く少女小説。昭和初期の作品なので大正浪漫の香りが。少し擬似恋愛めいた雰囲気を漂わせる人間関係がおいしいです。ありがとうございます。
 キャラクターとしてはやっぱり陽子ちゃんの自由奔放ぶりに目を奪われる。「軟派の女王」と称される彼女、わがままだけど嫌味がなくて、憎めない。ただそのあっけらかんとしたところは残酷さにもつながっていて、ちょっと末恐ろしいような気はする。
 あと、独特のテンポが楽しい。一直線につながったストーリーじゃなくて、場面場面を集めてる感じ。軟派と硬派の対立を遊び心たっぷりに描くところなんか、伸びやかでいいなぁ。海浜学校での名もない少女の失恋?などもほんの数行の脱線だったと思うけど、好きなところ。




 謎めいた貴公子、処女のような娼婦、聾唖の美男子、謎の依頼人…不思議な一行は森の洞穴の奥で何を経験したのか。それは悪魔の儀式か楽園への招待か?
 なんとも謎めいた不思議な話。形式的には法廷ミステリだけど、雰囲気としては幻想怪奇のような、でもSFかと思うようなところもあり、最終的には歴史小説でもあるし。途中までは先が気になってぐいぐい読めたのが、終盤に宗教が絡んでくると話の落下点が見えなくなって戸惑った。結局そのまま煙にまかれてしまった感じです。なんとも奇妙な読後感…。さて、真相はどこへ消えた。
 個人的には洞穴の中での出来事より貴公子の謎が心残り。洞穴の方はあのぶっ飛び話を聞かされた後、もう何が真実でもいーや!って気になったので。これも彼女の策略だったりするのかもしかして。