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ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

カレル・チャペック 北欧の旅 / ウォルター・デ・ラ・メア 死者の誘い

カレル・チャペック 北欧の旅


 イギリスだよりはエッセイに近いところがあった気がするが、この北欧の旅は船旅であるせいか旅行記らしくてわくわくする。永遠の黄昏の光、黒く古い森と花崗岩、そして鏡のように静かなフィヨルド。こうした美しい風景を簡潔な言葉で描写し、素直に賛嘆する一方(「申し上げるが、この世は美しいものだ」)、人々の描写にはシニカルなユーモアがたっぷり。ケチをつけるとすれば、フィンランドも巡っていただきたかったの一点につきる。


ウォルター・デ・ラ・メア 死者の誘い


 とある平凡な紳士アーサー・ローフォードが、墓場で眠り込んだ後目を覚ますと他人の顔になっていた…という幻想小説。主題も筋も明確なはずなのにやはり捉えがたい。川面は穏やかに見えても、その下には何が流れているのか…。デ・ラ・メアは描写が詳細な割に、肝心のところは伏せられているので幻惑される。ローフォードは顔貌を乗っ取られただけでなく、その肉体の中でも抗争が起きているらしいため、文中の「彼」が誰を指しているのか段々困惑してくる始末。特に中盤以降、彼の支えとなるグライゼルとの会話によく分からない点が多いので、おそらく読み取れていないところが多い。
 グライゼルと丘を登るシーンと、シネット夫人と階段を降りるシーンは対になってるのだろうが、このステージ間の移動は想像・精神⇔世俗と捉えていいのかな。安直かなぁ。