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ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

マルセル・ブリヨン 砂の都


 ラマ教の壁画を探し求めていた考古学者は、突如激しい砂嵐に襲われ洞窟へ避難する。砂嵐が過ぎ去ったあと、洞窟からはい降りて行くと、そこは活気あふれる中世のオアシス都市だった。
 読み終えて少し放心。これは好き。タイトルとは裏腹に、オアシス都市の描写はとてもみずみずしい。噴水が流れ落ち草樹が深々と呼吸する庭々は楽園さながら。絨毯や鉱物が商われるバザールの描写も楽しい。そして主人公が関わりあう人々も、素朴ながらそれぞれに気高く尊い。とまぁ(途中までは)いかにも至れ尽くせりな夢物語なのだが、落ち着いた筆致のためか淡々と受け入れさせられる。郷愁と、ある種のナイーブさに溢れた作品だけど、感傷にまでは流れないバランス感覚がとてもいい。
 しかしどうしたっていつかは楽園から追放されてしまうのだな…。終わってほしくない物語だった。