ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

一言感想まとめ

セシル=デイ・ルイス  オタバリの少年探偵たち


 第二次世界大戦直後のイギリス、空き地で二組に分かれて戦争ごっこをしていた少年たち。彼らが仲間内の一人のためにかせいだお金が忽然と消え失せ、嫌疑が片方のグループのリーダー、テッドにかかる。真相を追っていくうち、彼らはとある犯罪のしっぽをつかむ。
 戦争後のオタバリのまちを駆けまわる少年たち、彼らの行動力、友情が生き生きと描かれていてとても楽しい。屁理屈、軽口の叩き方や行動理論がうまいこと少年らしさを出してる。各組のリーダーのテッドとトピーのキャラクターの違いもいいですね。誠実かつ堅実、戦略家のテッド、気分屋だけど機転が利き要領のいいトピー。二人が結託してからの悪党の追い詰め方なんかは読みどころ。紙面の向こう側から喝采を送りたくなります。



エドモンド・ハミルトン  フェッセンデンの宇宙


 古典SF短篇集。著名な表題作については、今となっては定番ネタになってる感。しかしこれ発表されたのが1937年なんですね、そんなに古いとは。個人的に気に入ったのは人の無力さと悲哀のにじむ「太陽の炎」「向こうはどんなところだい?」など。作者のストレートさと叙情性が噛み合っているなぁと。他にも奇妙な味風の作品あり、幻想風の作品あり、でなかなかバリエーションに富んだ短篇集。




小森 香折  ニコルの塔


 寄宿舎で暮らし、塔の上で刺繍の授業を受ける少女たち。しかしその静かな生活には秘密があった。それに気づいてしまったニコルは…。
 レメディオス・バロの絵をもとにした児童文学。少女たちの、白い靄に包まれたような静かで謎めいた日々を描く前半はおもしろい。ただ、後半駆け足だったのが残念。もっと深く書き込めるのではないかな。読みやすいし、雰囲気はよかった。