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ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

中野 美代子  カスティリオーネの庭

感想 国内 歴史

中野美代子  カスティリオーネの庭



  円明園の西洋庭園にある、十二支像を擁する時計じかけの噴水の裏から白骨死体が発見された。その西洋庭園を設計したのは清の乾隆帝に宮廷画家として仕えるイエズス会の宣教師カスティリオーネ。彼が西洋庭園を完成させるまでの経緯と、乾隆帝の威光の影に潜む皇族の衰勢を描く。
 庭園小説というのでもっと牧歌的なのを想像していたけれど、静かな緊張感の流れる、淡々と辛い物語だった。舞台の円明園は巨大な湖を抱え、かなり湿度の高いところだと思うのだが、乾いた筆致からは砂漠にいるかのような錯覚を少し覚えるくらい。
 カスティリオーネら宣教師たちは宮中に留め置かれ、遠い異国までやってきた本来の目的である布教を思うように果たせず、乾隆帝の機嫌をとるために自らの才覚を費やすほかない。しかしそのうちにも日々は飛び去り、自身は老い、宣教師仲間も老い、あるいは亡くなるものも出てくるが、乾隆帝その人は時の経過を感じさせない(様に描写をあえてしていない気がする)。カスティリオーネの人生も宗教も芸術も最も大切な秘密も、全て超人じみた気まぐれな帝の掌の上なのだ。辛い。彼は最後に密かな反抗を試みるけれど。