ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

ルーシー・M・ボストン 海のたまご


ルーシー・M・ボストン 海のたまご




 夏休み、コーンウォールの海辺にやってきたトビーとジョーの兄弟は、浜の漁師から不思議な石の卵を手に入れる。その卵を秘密のプールに入れておいた二人は、やがて子供のトリトンと出会い、交流を深めていく。
 児童文学というよりは散文詩のような、とても長い絵本のような。ストーリーよりも表現が主役の作品。海の見せる美しさ、親密さ、神秘、激情が五感を使って描写される。海はそこにあるだけでなんと素晴らしいことか。あまり海を目にする機会がない自分は水平線を見るだけでも何だかどきどきするんだけれど、そんな高揚を思い出させてくれる。とりわけクライマックスのアザラシ達の不思議な集会のシーンは美しいです。挿絵の版画や章の頭のうずまき貝のイラストも素敵。海が好きな人はぜひ。