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ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

津原泰水 ルピナス探偵団の憂愁 / 皆川博子 倒立する塔の殺人

感想 国内 ミステリ


 ルピナス探偵団二作目。これを読みたいがために当惑(前作)を買ったクチです。ジュブナイルらしい「当惑」にくらべ、「憂愁」は戻らない青春の回想という切なさが全編に満ちていてまた趣が違う。冒頭である登場人物の死が明らかになり、そこから過去に遡っていくという構成のために、登場人物の言動がいちいちかなしく愛おしい。この構成はずるいぞ…。そして最後がまた。あざといくらいの構成だけど、不思議なくらい反発は感じない。ずっとシリアスというわけではなく、ユーモアもしっかりはいっているからかな。ここで笑っちゃう自分不謹慎なのではとところどころ思ったくらい。それと、最後のシーンの彼女たちがただただまぶしくて目がくらむ。


百合の木陰、犬には歓迎されざる、初めての密室、慈悲の花園





 「倒立する塔の殺人」と題が記されたノートに書かれた少女たちの小説と手記をめぐる幻想的ミステリー。戦時中の女子校が舞台ということで言葉遣いも美しい少女たちのきゃっきゃうふふどろどろ模様が甘美。YA向け(といっても浮ついた感じはないです)なせいか甘い毒に溺れる感覚はいつもよりは控えめ、がその分重層的構造の巧みさや少女たちの清冽な輝きが前面に出ている。皆川作品に甘く重く立ち込めている靄が薄れ、静謐な透明感とほの明るい光が感じられるような。皆川さんの作品はその濃密さのために読み終わったあとどっと疲労感におそわれるけど、このくらいの毒ならずっと浸ってられそう。タイトルとカバーに惹かれた人は是非。