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ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

アストリッド・リンドグレーン ミオよわたしのミオ

感想 海外 児童文学 ファンタジー


 おなじみの岩波少年文庫、思い返すと実際に子供のころに読んだ作品は意外に少ない。くまのプーさんやクローディアの秘密はよく読んだものですが、ドリトル先生やメアリー・ポピンズを読んだのは確か中学生になってからだったし…。リンドグレーンにいたっては今回初めて読みました。同文庫から何冊も出てる人なのになぁ。
 さてあらすじ。冷たい養父母のもとで辛い日々を過ごす少年ボッセ。ある夜彼はお父さんの王さまがおさめる「はるかな国」に迷い込みます。誰もが幸せに暮らしているかのように見える「はるかな国」ですが、残酷な騎士カトーへの恐怖が暗い影を落としていました。王子ミオとなったボッセは、新たな友達と白馬とともにカトーに戦いを挑みます…。
 王道も王道なストーリーですが、みずみずしい情景描写とイメージの美しさは素晴らしい。通勤電車の中で読んでいて、まわりとのギャップに思わずくらくらしました。銀ポプラのざわめくお父さんの王さまのばら園、金の朝日の橋、夕暮れにささやく井戸のまわりで静かに耳をかたむける子どもたち。
 しかし「はるかな国」の描写が美しければ美しいほど、読み手の哀しみは深まるというこの構図…。「はるかな国」の物語はハッピーエンドに終わりますが、ボッセの物語はまだ終わっていないわけですから。祈りにもにた切なさを抱えたまま、読み手もまた現実に戻っていかなければならないこの辛さ。この作品、察しのいい子はどう思うのだろう。