ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

日本探偵小説全集10 坂口安吾集


出版社/著者からの内容紹介
戦時中、犯人当てゲームに熱中し、古今東西の探偵小説を読破していた安吾が、満を持して発表した『不連続殺人事件』は、読者に挑戦した堂々たる本格巨編である。さらに結城新十郎と勝海舟を主人公とした『明治開化安吾捕物帖』や「アンゴウ」等数々の短編において、見事な探偵作家ぶりを発揮している。解説・都筑道夫 挿絵・高野三三男


読了日:9/30

 思ってた以上にエンタメ&推理小説。安吾が推理小説好きだったのがよく伝わってくる。「不連続殺人事件」での読者への挑戦とか、その辛辣さがむしろかわいく見えてくるし。付録の「犯人当てと坂口安吾」を読むと微笑ましさ倍増。
 安吾の推理小説のおもしろさは、その犯罪の因果をめぐる人間の情念や業が一編一編にたっぷりと詰め込まれているところだと思う。作品中にはいわゆる悪人がごろごろ出てくる。「不連続殺人事件」なんかは、人物描写ともつれた男女関係が書き連ねられる序盤の時点でもうお腹いっぱいな気分に。みんなアクが強いぜ…。しかし、安吾の描く悪人にはどこか憎みきれないところがあって、慣れるとこのアクの強さが不思議と快感になったりならなかったり。ちょうど、「心霊殺人事件」で、語り手がいびつな容疑者兄弟にどこか天真ランマンさを感じるように。

「風博士」「不連続殺人事件」「アンゴウ」
明治開化安吾捕物帳…読者への口上、舞踏会殺人事件、密室大犯罪、ああ無情、時計館の秘密、覆面屋敷、冷笑鬼、狼大明神、乞食男爵、トンビ男
「選挙殺人事件」「心霊殺人事件」