ヘンリー・ジェイムズ ねじの回転 -心霊小説傑作選-
ヘンリー・ジェイムズ ねじの回転 -心霊小説傑作選-
決して雇い主を煩わせない、という条件のもと田舎の館で兄妹の家庭教師の職を得た若い女性。子どもたちは天使のように愛らしかったが、館に出現する忌まわしい幽霊に取り込まれかけているようだった。彼女は幽霊から子どもたちを取り戻そうと奮闘するが…。
ゴーストストーリーの有名作。子どもたちは本当に幽霊と結託しているのか、一体家庭教師は幽霊を本当に見たのか、そもそも彼女は真実を語る気があるのかどうか、と疑い出したら何もかも曖昧になり靄の彼方に消えていくよう。細密な描写とは裏腹に肝心なところはぼかされる、英国怪奇ものらしいスタイルは結構好きです。しかし考えずにほいほい読み進めてしまう私には読み落としてるものがたくさんあるんだろうな…。
あとお兄ちゃんのマイルズ君があざとい。夜中に外に出てるのを見つかった時の言い訳が作中一番の衝撃だった。だめだ読み方を間違った感。でもはじめはこの家庭教師の手記を持っていたダグラス=マイルズと思わせるような書き方になってると思うしダグラスはその人が好きだったらしいしまぁそういう方向性にも開かれてると思うんですよこの作品は。ダグラス=マイルズととろうとするとちょっとアクロバティック深読みがいりそうですが。
表題作は中編ほどの長さで、他に短編が4つ。「古衣装の物語」「幽霊貸家」「オーエン・ウィングレイヴ」「本当の正しい事」いずれもゴーストストーリー。「古衣装の物語」は姉妹の確執を描いた古典的というかオーソドックスなお話。よく見かける型なんだけどやっぱりおもしろい。「幽霊貸家」は逆に意表をつかれるアイディア。