ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

ヤン・ヴァイス著  深見 弾訳 迷宮1000


ヤン・ヴァイス著  深見 弾訳 迷宮1000



 赤い絨毯の流れ落ちる階段の上、奇妙な夢から目覚めた男は記憶を失っていた。1000のフロアを持つ巨大建築の迷宮の中、わずかな手がかりから彼は自分の使命であったらしいタマーラ姫の捜索を開始するが、謎の館の主オヒスファー・ミューラーが立ちふさがる。チェコの古典SF・ファンタジー。
 あらすじはめっぽう面白そうなこの作品、しかし実際ストーリーはちょっとちゃちいしオチは流石にこの時代でもそれはあかんのでは、という感じではあります。喧騒と堕落ばかりが満ち溢れるディストピアと化した迷宮内の描写は楽しいです。ゲームブック的という感想をちらほら見かけますが、アイデアを片っ端から詰め込んでくる割に会話の多さや章の繋げ方がテンポの良さを生んでいて、そこらへんのポップさにもよるのかなあと。想像してたのとはちょっと違うタイプの作品でしたが、慣れてくるとこのこてこて感にちょっと愛着が。