ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

一言感想まとめ

小沼丹 『黒いハンカチ』


 若い女学校の教師ニシ・アズマがその観察眼と機転で小事件を解決するミステリ短篇集。上品な茶目っ気と静謐さをゆるゆると楽しむ。ミステリというよりも小沼丹の語りの魅力を目当てに買ったのだが、ミステリ部分も古典的で結構好みだった。チェスタトンとかドイル的な。はじめの女学校の部屋の描写が好きだったので、もっと学校を舞台にした話を書いて欲しかったなぁ。



ジョージ・マクドナルド 『ファンタステス』


 美しい妖精にさそわれ、妖精の国に足を踏み入れた主人公は不思議な国をさまよい歩く。人喰いの木、大理石の美女、若々しい目を持つ不思議な老婆。全体の筋は起伏に乏しくやや眠たい(失礼)印象をうけるけど、数々の幻想的シーンの瑞々しい美しさには目を瞠る。
「リリス」は後半の展開についていけなかった感があるんだけど、「ファンタステス」は素朴な分まだ親しみやすいかな。主題はあくまで主人公アノドス個人の成長だし。それと、解説にもあったけど、「ファンタステス」には青春の感傷がある。はじめはこの兄ちゃん(主人公)美女追っかけることしか考えてないのでは…と思ってたけど若いんだからそれでいいんです。多分。C.S.ルイスが「リリス」ではなくこの「ファンタステス」の方に素晴らしい序文を寄せているのはなんか納得。



津原泰水 『琉璃玉の耳輪』


 尾崎翠原案・津原泰水著、ときたら読んでみなくてはなるまい。謎の貴婦人から女探偵岡田明子のもとに舞い込んだ、琉璃玉の耳輪をつけた三人の娘を探してほしいという依頼。琉璃玉の耳輪の秘密とは?
 昭和の雰囲気とこってりしたキャラクターたちの発する熱気が楽しい。もっととぼけた雰囲気の作品になるのかなと思ってたらがっちりエンタメしてました。私得ポイントもいくつかあってよいです。