ゆうれい読書通信

幻想文学、ミステリ、SFなど

感想

綾辻 行人 十角館の殺人

(講談社文庫)" title="十角館の殺人 (講談社文庫)" width="115" height="160" border="0" />十角館の殺人 (講談社文庫) 館シリーズ、今回初めて読んだ。海外ミステリも知らない作品いっぱいあるのだけど、国内ミステリはそれ以上に読んでない。未知の大陸で…

吉屋 信子 わすれなぐさ / ジョン・ファウルズ マゴット

わすれなぐさ (河出文庫) 女学生三人の友情の行方を描く少女小説。昭和初期の作品なので大正浪漫の香りが。少し擬似恋愛めいた雰囲気を漂わせる人間関係がおいしいです。ありがとうございます。 キャラクターとしてはやっぱり陽子ちゃんの自由奔放ぶりに目を…

一言感想まとめ

ジョージ・オーウェル 一九八四年 一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫) いつか読もうと思いつつずるずると先延ばしにしてたのをようやっと読んだ。希望のないストーリーながらシンプルな構成と筆致は思いの外読みやすい。特に第三部~ラストはそれまで淡々…

オトフリート=プロイスラー クラバート / ジャン・コクトー 恐るべき子供たち

クラバート 古い伝説をもとにしているだけあって、力強い物語と死の暗い影、そして神秘性に魅了される。今読んでも十分以上に面白かったけれど、いい意味で、子供の頃に読んでいればと思った本だった。ちょっとトラウマになるかもしれんが強烈な印象を残した…

パーシヴァル・ワイルド 検死審問ふたたび

検死審問ふたたび (創元推理文庫) 傑作ユーモアミステリ『検死審問―インクエスト』の続編。前作は展開の鮮やかさ、語りの上手さ、軽妙なユーモアと魅力たっぷりの小気味いい作品だったけど、続編も期待に違わず素晴らしかった。特にユーモアに関しては前作を…

カレル・チャペック イギリスだより / フランシス・アイルズ 殺意

イギリスだより―カレル・チャペック旅行記コレクション (ちくま文庫) 初チャペックが旅行記というのもどうなんだろうとちょっと思ったけど、おもしろかったので問題なし。ユーモアと愛情(そして皮肉)が詰め込まれた愛すべき作品。ロンドンや都市部について…

イーヴリン・ウォー 大転落

大転落 (岩波文庫) 初イーヴリン・ウォー。ごく基礎的な英文学史でも名前の上がってくる作家だと思いますが、なんか古典的というイメージがあって「読むものなくなったら読んでみてもいいかも」候補にいれていた。つまり九割方読まないであろう候補ですね。…

庄野 潤三 陽気なクラウン・オフィス・ロウ

陽気なクラウン・オフィス・ロウ (講談社文芸文庫) 半分はイギリス滞在について、半分はチャールズ・ラム(とその著作のエリア随筆)についての紀行文学。あまりあらすじとか確認せず、イギリス旅行記のつもりで借りてきたのでラムについての記述の多さには…

ケイト・アトキンソン 世界が終わるわけではなく / カルロス・ルイス・サフォン 天使のゲーム 上・下

世界が終わるわけではなく (海外文学セレクション) ギリシャ神話やポップカルチャーを下地に、人生の生々しさや苦さが織り交ざるシュールでふわふわした短編たち。ケリー・リンクやケヴィン・ブロックマイヤーと似た系統の作品ですね。読み終わってみると、…

キース・ロバーツ パヴァーヌ

パヴァーヌ (ちくま文庫) エリザベス1世の暗殺により、ローマ・カトリックの支配下に置かれたイギリス。教会により科学が弾圧され異端審問がいまだ続く中、反乱の動きが起こる。 手に汗握るサスペンスフルなスチームパンクSF…かと思いきや意外に渋い。このあ…

田中ロミオ 人類は衰退しました④ / 小田雅久仁 本にだって雄と雌があります

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫) 3巻はちょっと気が滅入りそうだったので飛ばして先に4巻。気力が復活したら3巻も読むから…回復する見通しはたってないというか気力がないのが平常だけど… 4巻は気楽に読むのにうってつけ。「妖精さんの、ひみつのこう…

津原泰水 ルピナス探偵団の憂愁 / 皆川博子 倒立する塔の殺人

ルピナス探偵団の憂愁 (創元推理文庫) ルピナス探偵団二作目。これを読みたいがために当惑(前作)を買ったクチです。ジュブナイルらしい「当惑」にくらべ、「憂愁」は戻らない青春の回想という切なさが全編に満ちていてまた趣が違う。冒頭である登場人物の…

アガサ・クリスティ 五匹の子豚

五匹の子豚 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) 才能ある画家だった夫を毒殺し獄中死した妻。誰が見ても有罪間違いなしの事件だったが、16年後、ポアロのもとに彼らの娘が訪れて母の無罪を明らかにしてほしいと依頼する。当時の関係者5人の証言と手記からポア…

W.B.イエイツ ケルトの薄明

ケルトの薄明 (ちくま文庫) イエイツが集めたケルトの伝承などを、イエイツ自身が書き記したもの。完全なフィクションではなく、実際に起こったと言われている不思議な話(もしくはそれを語り継いだもの)といったものが多くおさめられている。そのせいか、…

ジュール・シュペルヴィエル 海の上の少女

海の上の少女―シュペルヴィエル短篇選 (大人の本棚) 不思議な光をたたえるシュペルヴィエルの短篇集。強いて言うなら童話に近い雰囲気の作品が多いが、その喪失感とさみしさは透明ではあるものの子どもが読むにはほろ苦い。 シュペルヴィエルは二つの祖国、…

エドワード・ケアリー 望楼館追想

望楼館追想 (文春文庫) 社会からはみだした、奇妙な人々ばかりがすむ「望楼館」。そこに新たな住人がやってきたことで、望楼館に変化が起こっていくが…。 タイトルと皆川博子解説に惹かれて借りてみたものの、辛い読書だった…。簡単にあらすじを書くとなんか…

一言感想まとめ

アンナ・カヴァン 『アサイラム・ピース』アサイラム・ピース カフカを思わせる不条理と不安、寄る辺のなさ。悲鳴になる一歩手前の、それでも抑えながら語る声を美しいといっていいものかどうか。装丁は文句無しに美しいが。カフカにはユーモアのクッション…

一言感想まとめ

小沼丹 『黒いハンカチ』黒いハンカチ (創元推理文庫) 若い女学校の教師ニシ・アズマがその観察眼と機転で小事件を解決するミステリ短篇集。上品な茶目っ気と静謐さをゆるゆると楽しむ。ミステリというよりも小沼丹の語りの魅力を目当てに買ったのだが、ミス…

ジーン・ウルフ デス博士の島その他の物語

デス博士の島その他の物語 (未来の文学) ウルフの作品は、丁寧に読み込むおもしろさはもちろん、素朴な読みでも充分以上におもしろいのがすばらしい。「ケルベロス第五の首」を読んだ時にも唸らされたが、この「デス博士の島その他の物語」もおもしろかった…

由良君美 椿説泰西浪曼派文学談義 (平凡社ライブラリー)

椿説泰西浪曼派文学談義 (平凡社ライブラリー) 読了日:2/23 知識の乏しい私には名前しかしらんレベルの人がいっぱい出てきてあっぷあっぷ(特に絵画・音楽についてはお手上げ)、ではあったものの小気味いい文章のおかげで読み通せた。浪漫派の夢、ユートピ…

一言感想まとめ

ショーン・タン 『アライバル』アライバル 読了日:1/27字のないモノクロの絵本。ひとり異国に移住してきたお父さんが少しずつ異文化に溶けこみ生活していく様子を描く。異国の描写がわくわくする。 クラフトエヴィング商會 『らくだこぶ書房21世紀古書目…

津原泰水 ルピナス探偵団の当惑

ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫) 読了日:1/26 仲良し女子高生トリオ+男子高校生の四人組、ルピナス探偵団が解き明かす青春ミステリー。出だしこそとてもジュブナイルな感じですが、謎は結構本格的。一話目は「なぜ犯人は冷めたピザを食べて帰ったのか…

一言感想まとめ

アントニイ・バークリー 『第二の銃声』第二の銃声 (創元推理) (創元推理文庫) 読了日:1/3 これまたおもしろかった。色々とにやにや。郊外の邸宅で招かれていたお客さんたちの余興の最中に事件発生、という古き良き英国ミステリを楽しんでいたと思ったら終…

牧野信一 風媒結婚 (日本幻想文学集成)

本・雑誌牧野信一 風媒結婚 (日本幻想文学集成) 読了日:2/12 センター現文で話題になってたマキノさん。といってもこの本には出題された「地球儀」ははいってませんが…岩波の『ゼーロン・淡雪』だけ以前に読んだことがあって、日本の土俗的な情景の中にふら…

スタニスワフ・レム  泰平ヨンの航星日記〔改訳版〕

泰平ヨンの航星日記〔改訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF レ 1-11) 読了日:2/11 宇宙を飛び回る泰平ヨンが巻き込まれたとかく珍妙なできごとをつづった日記、という体裁のユーモアSF連作短編集。レムはソラリスしか読んだことがなかったので、ユーモアSFといっても…

一言感想まとめ

まとまった感想を書くタイミングを逃してしまった本たちの一言感想。面白くなかったわけでは全くなく、むしろ面白かった作品ほど感想書くのに困ることがある… 妖魔の森の家 (創元推理文庫―カー短編全集 (118‐2))読了日:12/6評判の高い表題作は、カーらしい…

ジャック・ルーボー 麗しのオルタンス

麗しのオルタンス (創元推理文庫) 読了日:2/7 平和な街に突如起きた奇妙な連続金物屋襲撃事件と、麗しきヒロインオルタンスと謎の青年の恋の行方…が一応あらすじではあるものの、ストーリーよりもその珍妙な語りを楽しむ小説。事件は起こってるものの解決に…

ロバート・チャールズ・ウィルスン ペルセウス座流星群 (ファインダーズ古書店より)

ペルセウス座流星群 (ファインダーズ古書店より) (創元SF文庫) 読了日:1/10 ひと月前に読んだ本なので早くも記憶がぼんやり…。確か幻想好きにもおすすめのSF短篇集、ということで買ったのだが幻想好きというか怪奇好きにおすすめのSFだった。結構ホラーちっ…

クリスティーナ・メルドラム マッドアップル

マッドアップル (創元推理文庫) 読了日:1/31 母を毒殺し、その後引き取られた伯母の家で伯母といとこにも同じ毒を飲ませ家に火を放ったという疑いをかけられた少女アスラウグ。異様な事件の真相とは。 処女降誕、魔女的な薬草・毒草についての知識、古代の…

ルイジ・ピランデッロ 月を見つけたチャウラ

月を見つけたチャウラ: ピランデッロ短篇集 (光文社古典新訳文庫) 読了日:12/1 「突然訪れる人生の真実の瞬間を、時に苦々しく時にユーモラスに描く短篇集」と紹介されているが、私にとってはかなり苦く、不安をかきたてられる本だった。どれも短い話で幻想…