海外
光嶋 裕介 幻想都市風景幻想都市風景 珍しく画集など。人の気配があまりしない都市・建築の絵は好き。まわりに生きた他人がたくさんいるのは煩わしいが、全く人の手が入っていない自然の中は不安・寂しい、というダメっぷりを許容してくれますし…。 この『幻…
R.A.ラファティ 昔には帰れない昔には帰れない (ハヤカワ文庫SF) 初ラファティ。作品紹介によると「SF界のホラ吹きおじさんの異名を持つ鬼才ラファティ」だそうですが、この短篇集はそんなにSF分ないような。二部構成で、Ⅰ部とⅡ部では編者が違い、収録作品の…
ミオよわたしのミオ (岩波少年文庫) おなじみの岩波少年文庫、思い返すと実際に子供のころに読んだ作品は意外に少ない。くまのプーさんやクローディアの秘密はよく読んだものですが、ドリトル先生やメアリー・ポピンズを読んだのは確か中学生になってからだ…
九つの銅貨 (福音館文庫 物語) 詩人であり、幻想文学の書き手であり、児童文学も多数のこしているウォルター・デ・ラ・メア。少し前に創元推理文庫の復刊フェアで『死者の誘い』が出てましたね。今積んでます。読むの楽しみ。 この『九つの銅貨』はジャンル…
万物理論 (創元SF文庫) 初イーガン。ハードSFって言うんでガチガチの理系よりSFなのかなと思っていたけど、人文学的な面もかなり強い。バイオテクノロジー、通信技術などのSFガジェットはあれこれと描かれるが、自己と世界の関わり、人間性という主題がはっ…
ウィリアム・アイリッシュ 『幻の女』幻の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 9-1)) 適度な緊迫感とスピードで読ませる、お手本のようなストーリー展開。よく出来たサスペンスミステリです。しかし今この作品が評価され続けているのは、プロットの面だけではな…
もうひとつの街 プラハの古書店で手にとった本には見たこともない文字が書かれていた。その本を購入して以降、主人公はプラハの街の不思議なもう一面を見ることになる。古風なファンタジーを思わせる滑り出しだけど、繰り出されるイメージと文章はかなりシュ…
ドグラ・マグラ ぐっと引きずり込まれる冒頭部から、独特の言葉遣いと擬音語の多さが生むリズム感と、事件の真相がいつ明かされるかへの興味が先へ先へと引っ張っていってくれます。奇書やら読んだら気が狂うやら言われている作品ですが存外リーダビリティい…
アガサ・クリスティ ゼロ時間へゼロ時間へ (クリスティー文庫) 殺人が起こる決定的な「ゼロ時間」。その前には様々な出来事が積み重なった結果、その瞬間へつながっていくはず。その過程を描くミステリが本作、ということになります。クリスティの他の作品で…
ジェラール・ド・ネルヴァル 火の娘たち火の娘たち 各短編の題名が女性名ばかりなのからも分かるように、基本主題は失われた恋で、一見ごく素朴なロマンスで構成されているように見えるけど…。「シルヴィ」や「コレッラ」の印象に引きずられているのかもしれ…
人間和声 (光文社古典新訳文庫) 夢見がちな青年、スピンロビンは“勇気と想像力ある秘書求む。当方は隠退した聖職者。テノールの声とヘブライ語の多少の知識が必須”という謎の求人に応募し、山奥の屋敷に住み込むことになる。雇い主のフィリップ・スケール は…
コンパス・ローズ (ちくま文庫) ル=グウィンのSFを読むのは二冊目。前に読んだのは『なつかしく謎めいて』。短篇集好きなのでつい短篇集に手を出してしまう。ハイニッシュサイクルもそのうち読まなくては。 この『コンパス・ローズ』は70年代あたりの作品が…
わすれなぐさ (河出文庫) 女学生三人の友情の行方を描く少女小説。昭和初期の作品なので大正浪漫の香りが。少し擬似恋愛めいた雰囲気を漂わせる人間関係がおいしいです。ありがとうございます。 キャラクターとしてはやっぱり陽子ちゃんの自由奔放ぶりに目を…
ジョージ・オーウェル 一九八四年 一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫) いつか読もうと思いつつずるずると先延ばしにしてたのをようやっと読んだ。希望のないストーリーながらシンプルな構成と筆致は思いの外読みやすい。特に第三部~ラストはそれまで淡々…
クラバート 古い伝説をもとにしているだけあって、力強い物語と死の暗い影、そして神秘性に魅了される。今読んでも十分以上に面白かったけれど、いい意味で、子供の頃に読んでいればと思った本だった。ちょっとトラウマになるかもしれんが強烈な印象を残した…
検死審問ふたたび (創元推理文庫) 傑作ユーモアミステリ『検死審問―インクエスト』の続編。前作は展開の鮮やかさ、語りの上手さ、軽妙なユーモアと魅力たっぷりの小気味いい作品だったけど、続編も期待に違わず素晴らしかった。特にユーモアに関しては前作を…
イギリスだより―カレル・チャペック旅行記コレクション (ちくま文庫) 初チャペックが旅行記というのもどうなんだろうとちょっと思ったけど、おもしろかったので問題なし。ユーモアと愛情(そして皮肉)が詰め込まれた愛すべき作品。ロンドンや都市部について…
大転落 (岩波文庫) 初イーヴリン・ウォー。ごく基礎的な英文学史でも名前の上がってくる作家だと思いますが、なんか古典的というイメージがあって「読むものなくなったら読んでみてもいいかも」候補にいれていた。つまり九割方読まないであろう候補ですね。…
世界が終わるわけではなく (海外文学セレクション) ギリシャ神話やポップカルチャーを下地に、人生の生々しさや苦さが織り交ざるシュールでふわふわした短編たち。ケリー・リンクやケヴィン・ブロックマイヤーと似た系統の作品ですね。読み終わってみると、…
パヴァーヌ (ちくま文庫) エリザベス1世の暗殺により、ローマ・カトリックの支配下に置かれたイギリス。教会により科学が弾圧され異端審問がいまだ続く中、反乱の動きが起こる。 手に汗握るサスペンスフルなスチームパンクSF…かと思いきや意外に渋い。このあ…
五匹の子豚 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) 才能ある画家だった夫を毒殺し獄中死した妻。誰が見ても有罪間違いなしの事件だったが、16年後、ポアロのもとに彼らの娘が訪れて母の無罪を明らかにしてほしいと依頼する。当時の関係者5人の証言と手記からポア…
ケルトの薄明 (ちくま文庫) イエイツが集めたケルトの伝承などを、イエイツ自身が書き記したもの。完全なフィクションではなく、実際に起こったと言われている不思議な話(もしくはそれを語り継いだもの)といったものが多くおさめられている。そのせいか、…
海の上の少女―シュペルヴィエル短篇選 (大人の本棚) 不思議な光をたたえるシュペルヴィエルの短篇集。強いて言うなら童話に近い雰囲気の作品が多いが、その喪失感とさみしさは透明ではあるものの子どもが読むにはほろ苦い。 シュペルヴィエルは二つの祖国、…
望楼館追想 (文春文庫) 社会からはみだした、奇妙な人々ばかりがすむ「望楼館」。そこに新たな住人がやってきたことで、望楼館に変化が起こっていくが…。 タイトルと皆川博子解説に惹かれて借りてみたものの、辛い読書だった…。簡単にあらすじを書くとなんか…
アンナ・カヴァン 『アサイラム・ピース』アサイラム・ピース カフカを思わせる不条理と不安、寄る辺のなさ。悲鳴になる一歩手前の、それでも抑えながら語る声を美しいといっていいものかどうか。装丁は文句無しに美しいが。カフカにはユーモアのクッション…
小沼丹 『黒いハンカチ』黒いハンカチ (創元推理文庫) 若い女学校の教師ニシ・アズマがその観察眼と機転で小事件を解決するミステリ短篇集。上品な茶目っ気と静謐さをゆるゆると楽しむ。ミステリというよりも小沼丹の語りの魅力を目当てに買ったのだが、ミス…
デス博士の島その他の物語 (未来の文学) ウルフの作品は、丁寧に読み込むおもしろさはもちろん、素朴な読みでも充分以上におもしろいのがすばらしい。「ケルベロス第五の首」を読んだ時にも唸らされたが、この「デス博士の島その他の物語」もおもしろかった…
ショーン・タン 『アライバル』アライバル 読了日:1/27字のないモノクロの絵本。ひとり異国に移住してきたお父さんが少しずつ異文化に溶けこみ生活していく様子を描く。異国の描写がわくわくする。 クラフトエヴィング商會 『らくだこぶ書房21世紀古書目…
アントニイ・バークリー 『第二の銃声』第二の銃声 (創元推理) (創元推理文庫) 読了日:1/3 これまたおもしろかった。色々とにやにや。郊外の邸宅で招かれていたお客さんたちの余興の最中に事件発生、という古き良き英国ミステリを楽しんでいたと思ったら終…
泰平ヨンの航星日記〔改訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF レ 1-11) 読了日:2/11 宇宙を飛び回る泰平ヨンが巻き込まれたとかく珍妙なできごとをつづった日記、という体裁のユーモアSF連作短編集。レムはソラリスしか読んだことがなかったので、ユーモアSFといっても…